“盂兰盆船”

盂兰盆节13日,我带着6个月大的儿子在东北高速公路上向北行驶到我丈夫的父母家。 老公三天前放长假,早点到他爸妈家,准备盂兰盆节,买完东西扫墓,等我和儿子去到达。底部。 我早早下班,从托儿所接儿子,然后上了高速公路。 nextpage每年这个时候堵车比较多,再这样慢慢开下去,大概半年就到爸妈家了晚上。 带着宝宝回家,途中稍事休息。这只是很大的压力和压力。 由于我们天天疏远,如果我在一天中打扰了我丈夫的父母,我会感到很抱歉。我犹豫了片刻,听到儿子的声音,还是决定下高速,往普路上跑。 下一页sep

盂兰盆节13日,我带着6个月大的儿子在东北高速公路上向北行驶到我丈夫的父母家。

老公三天前放长假,早点到他爸妈家,准备盂兰盆节,买完东西扫墓,等我和儿子去到达。底部。

我早早下班,从托儿所接儿子,然后上了高速公路。

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每年这个时候堵车比较多,再这样慢慢开下去,大概半年就到爸妈家了晚上。

带着宝宝回家,途中稍事休息。这只是很大的压力和压力。

由于我们天天疏远,如果我在一天中打扰了我丈夫的父母,我会感到很抱歉。我犹豫了片刻,听到儿子的声音,还是决定下高速,往普路上跑。

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路线4。我走的第一条路,人烟稀少,房屋稀少,路灯昏暗得像光秃秃的灯泡。

50 公里/小时。可能因为之前一直在超车道行驶,差距太大了,我马上就后悔了。

回头看了看后座,在儿童座椅上,他向熟睡的儿子道歉,“求求你,再忍耐一下。” 做到了。

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在看起来像农家小路的地方一直跑了一会儿,左转从4号国道出发,不知不觉就变成了沿海的县道。

一侧一条车道,起伏剧烈。

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太阳已经落山,周围一片漆黑,分不清海天。路面虽然是铺的,但是凹凸不平,在缓坡上很难打方向盘。你可以它不平坦。我很快意识到这条路不是高速公路。

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海浪拍打到路边。

偶尔,白色的水花在黑暗中高高升起。

没想到日落后的大海会如此阴森森的。

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“盂兰盆船”

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突然想起今天是盂兰盆节的开始,我开始后悔又下了高速。

“盂兰盆节期间不要靠近海边。”

“我在车里,又不是在海里游泳,所以没事。迷信迷信。”

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喇叭里正在播放玉铭的名曲《中央高速公路》。

伴随着妙趣横生的旋律哼着歌,想起首都高速路上的拥堵和交通拥堵,我开始不那么在意起伏不平的乡间小路了。

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当我们接近一个平缓的弯道时,一艘船屋停泊在海上。我看到你了。

船周围的面板被点亮,照亮了海面。

仔细一看,船内好像正在举办派对。

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只见一个身影随着音乐的伴奏欢快地跳舞,手里拿着一个勺子,勺子的一端是一个圆碗。

没过多久,那件淡蓝色的羽袍被海风吹得仿佛笼罩了整艘船,开始飘荡在空中。

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宛如盂兰盆节上放的灯笼一般的绝景。这个乡村小镇是主要的可能是盂兰盆节的活动。我决定多看一会儿,于是关掉收音机,把车停在卫赛旁边,一路开着车窗。

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伴着微凉的海风,

微弱的声音说,“喂。”

一个黑色的身影正从船屋里向你招手。

一个人,两个人…… 人数陆续增加。

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“嘿。”

“…来on

“过来。”

“喂。”

咦?

这很有趣。

虽然距离很远,但声音却越来越近。

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在漆黑的夜海中,根本看不到靠岸的船只和船上的人。

灯笼的大小像气球一样膨胀收缩,光线也变得不稳定,忽明忽暗。我很困惑。

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仔细一看,似乎是一件羽毛长袍在船周围飞舞,看起来像是一根被撕裂的桅杆的残骸。

它似乎不再脱离这个世界。

手头的时钟指向22:00。

从我们沿着海岸开始跑步,已经过去了两个多小时。

活动应该已经结束了。

我慌忙关上了窗户,心里冒出一股冒泡的恐惧,浑身发冷。

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这时候,正在后座安静睡觉的儿子大叫,我起身哭了起来。

唐!

唐唐唐!

后座护栏侧的车门被敲了几下,

“哎!”

“哎!”

说一个浑厚、沙哑的男人声音。

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当我转身面对声音时,我看到一个黑色的身影站在车门后面。

后座门和护栏之间没有足够的空间供人站立。

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我使劲踩油门,然后开走了。我不记得我是怎么跑的。

在路上,我找到了Lawn,叫我老公到停车场来接我。

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当我到达我老公父母家的时候到家,已经是半夜1点多了。在大门口,公公婆婆焦急地等待着我们的到来。

“怎么了?手机没电了,我还担心出什么事呢。”我把他放在被子上睡了,见他平安到家,我松了口气,他开始哭了。

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看我心急如焚,

“嗯,谢谢“谢谢你今晚的长途跋涉,喝了这个,早点休息,明天我们一起去扫墓。”他领着我来到一间摆着神坛的客房。

铺着蓬松的被褥,我换了衣服。

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“你到底遇到了什么?开车习惯了,有不会迷路的。那个地方一直以来都被认为是不好的地方。好吧,这是到达这里的最短路径。这是一个很少有人进入的地方,即使他们不是本地人。.

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我丈夫似乎对这件事起了疑心。

我试图保持安静,但还是决定说出事情的来龙去脉。

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一说到船屋,

老公脸色惨白。

“父亲,母亲,醒醒吧。由香里酱,由香里酱被盆船迷住了。”

大声喊道。

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“什么?”……”

来自佛教祭坛和客厅,我都能听到岳父岳母的惨叫声。

“今天是盂兰盆节。

“对不起。下一页

“你什么意思你不明白?”

公公一边安抚婆婆,一边说,

“由香里最疼,不是这个问题。”

我慢慢地、平静地听到了。

“由香里看到了多少黑影?”

“我想应该不止三个吧,其实不是,我看不清楚,但我想大约有五个人。”

“你们说话了吗?”我在船上挥手致意。”

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“然后。”

“……”

“△△(儿子的名字)没看到。”

“可能没看到,他睡着了。”< /p>

“你没注意到。

“我不知道.我像是察觉到了什么异样,放声大叫。

老公长舒一口气。

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“他挥了挥手。”

“不,我不能。”

我感觉像我妈妈婆婆骂我,我就狠狠地反驳。

每回答一个问题,气氛就很恶劣,大家都不淡定。

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“他们有说什么吗?”

“过来。”

“你有被叫到吗?”

“你过来了吗?” p>

他垂直摇头。

“然后呢。”

“还有,那个时候,它看起来像一件羽衣,但仔细一看,却不是羽衣,它是一根破烂的桅杆的残骸。“它像许多层布一样在风中飘荡。”

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我的丈夫,

“不愧是你。感谢你的专业精神、描述力和表现力,最重要的是,你的真实故事。”

>

然后开始用有点讽刺的语气又哭又笑。

公公婆婆抬头看着天花板,捂着脸。

“宴会你看完了。”

“开场?”你说的是风景吗?

“总之,宴会的结局你们都看到了,开场就是让你们看到最后的真面目。”

公公婆婆婆婆 抽泣声响彻四周。

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“几个黑色的人影站在车窗外。”

“砰的一声关上了车门。

“一个男人的声音说,嘿!”这也是我的错。如果是这样,我们三个人就会来。

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老公咬唇,搂着公公婆婆的肩膀,说不定他们就在这里。”

”这是一个有生命的物种。”

“是的。越过山越快越远。”

“好吧。我会这样做。现在,我会住在由香里的父母家。”

“那很好。”

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>

“快点。快点。如果是我们,别担心。”>

“△△君可能长不大了。我和由香里同学会保护你一辈子的。”

我的岳父- law捂着脸挤了出去。我说话的声音就像

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除此之外,婆婆说话了。

“活人更强,告诉他,要坚强,别输了,你们已经为人父母了。”

两人哭得眼睛都红肿了他们的肩膀在颤抖,仿佛他们将在余生中分别。

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老公把熟睡的儿子放回儿童座椅,连衣服都没换就强行把我拉回车里。>

“我会的详情等会再告诉你,反正你和△△不能在这儿,以后再也不来了。”

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老公坐在驾驶座上,擦了他流着泪,发动了引擎,缓缓地开着车,似乎在担心着什么。

我和儿子刚刚离开我们刚刚去过的丈夫家。

一个你永远不会再去的房子。

没有力气看时间,我闭上眼睛睡着了。

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进入东北高速公路时,太阳已经很高了。我曾是。

在附近的停车场购买冷饮,我丈夫和我吃了三明治。

我儿子好像也没变。

直到这时,一直沉默不语的老公,终于张开了厚重的嘴巴。

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以后,我老公的故事是。

我写的是正文。

我看到的屋形船叫做“盂兰盆船”,据说每年一次盂兰盆节开始时,太阳完全落山后突然出现在海上。

总之,它似乎是一艘连接这个世界和另一个世界的正规船。

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不,有人告诉我有各种各样的理论,但是为了方便起见,以后统一记法为“ship”,但标题为“boat”。)

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它承载死者的来世,每年盂兰盆节开始时来一次,并在盂兰盆节期间停留在海上。然后,在盂兰盆节结束的黎明前,死者被抬上船并返回另一个世界。

自古以来,它就扮演着今世与彼世之间的“渡口”。

只有刚过完逝世一周年和未达到预期寿命就去世的人,不包括自杀的人。

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据说每年的容量都在变化,那一年能骑的人数好像有限制。

然而,据说每年与亲爱的家人或昔日恋人相见时,总会有人选择不回船,留在这个世界上。

如果去的人和回来的人不一样,船就回不了异世界,会在这个世界徘徊。似乎死去的人永远无法回到来世。

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然而,一些死者在盂兰盆节期间找到了他们的替罪羊,并试图让他们上船。有人认为。

只要有足够的船夫,他们不在乎乘客的数量是否会随着他们去或返回而变化。

心怀不轨的人所做的,就是在这期间杀死靠近大海的人,让大海看起来像是沉船一样,然后将他们送往异界,作为自己的替身返回。显然。

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以前是海上事故,最近好像经常伪装成交通事故。因为它可以同时杀死多人。

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其实,大约两年前,有一户人家翻过生锈的护栏,跳入了下方的悬崖峭壁。

面包车里好像有5个人。

一家人一定是回家过盂兰盆节了。

只有一个幸存者,他告诉我的和你说的一模一样。

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没有解决方法。

我唯一能说的就是

永远不要靠近海洋,不仅仅是盆地。

此外,永远不要遇到任何知道这件事的人。

(打电话好像也不错。)

我会住在没有海和河的地方,这样我的朋友就不会注意到了。

就是这样。

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利用这个假期,我将取消我的公寓,搬到靠近瓯山脚下的父母家。

他们不会追你上山,这样比较安全。

最重要的是,被选为替罪羊的人都是弱者。不会过时的东西。据说灵魂美丽的人更容易被选中。

这就是我丈夫告诉我的全部内容。

听完故事,我抱住了躺在我胸前安然入睡的儿子。

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“这只是个都市传说,我妈跟我说,活着的人比我强多了。”

我听不懂话分别的时候,我岳父说。

“这孩子不行,我爸说了算,跟你刚才说的一样。”

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老公一脸恼火,但先是事实我不得不说话,并讲述了以下故事。

“坏人好像喜欢年轻的女人和小孩,还有,从前有一个婴儿,要坐船被带走,那个孩子一辈子卧床不起

“好吧,我不能停止担心。他们就是这么想的。你现在是母亲了,我也是父亲了。让我们向前看吧。”

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在服务区休息了大约一个小时后,我们就前往我父母家。

我上了高速公路,给家里的妈妈打电话。

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“哎呀妈呀,突然有点抱歉,而且我觉得跟盂兰盆节没什么关系。”

所以我想请你在这待一会儿。另外,我有很重要的事情要告诉你。你有父亲吗?是的,日本的Ya-san和△△君在一起了。请稍等。我想我们会在一个小时内到达那里。去年八月,我们一家三口,和父母一起住在我父母家。

当我好不容易找到原来的工作时,我丈夫在当地一家公司找到了一份新工作,我开始在农村生活。

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是啊,13号看到盂兰盆船,已经一年了。半夜2点多,老公的手机接到小舅子打来的电话。

昨晚盂兰盆节伊始,得知公公婆婆双双遇难于海中。

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即使是这样,我仍然为不能参加父母葬礼的丈夫感到难过。

我含着歉意的泪水一遍又一遍的道歉。

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老公悄悄摇头问谁没有犹豫,他开始说话。

-他们现在在Bon Boat上。

-好吧,一个是不够的。

– 没办法。

-我不在乎会发生什么。

-我不会输给他们的。

-不管怎样…

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(听不见)

老公笑眯眯安静我闭上眼睛,双手合十,仿佛什么都明白了。


作者:あんみつ姫
原文:「盆の舟」

旧盆の13日、私は生後6ヶ月の息子を車に乗せ、夫の実家へ向かうため東北自動車道を北上していました。

夫は、3日前から長期休暇が取れ、一足先に実家に着き、旧盆の支度を整え、買い出しと墓参りを済ませ、私と息子の到着を待っているとのことでした。

仕事をはやめに終え、息子を託児所に迎えに行き、高速に乗ったのは、昼の12時を少し回っ
たところでした。

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時節柄、かなり渋滞しており、このまま ノロノロ運転を続けていては、実家に着くのは深夜になってしまいそうです。

途中何度か休憩を取りながら、乳飲み子を抱えての帰省。それだけでも相当なストレスとプレッシャーでした。

日頃疎遠にしている手前、日をまたいでお邪魔したのでは、夫の両親に申し訳が立たないような気がしました。一瞬躊躇いましたが、グズる息子の声を聞き、小心者でお人好しの私は、高速を降り一般道を走ることにいたしました。

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国道4号線。初めて通る道は、民家もまばらで、街灯は、裸電球のように薄ぼんやりとしています。

時速50キロ。それまで追い越し車線をひたすら走ってきたせいか、あまりのギャップに、私の判断は間違いではなかったかと早くも後悔しておりました。

後部座席を振り返り、チャイルドシートの上で、すぅすぅ 寝息を立てている息子に、「お願い、もう少し我慢してね。」と詫び、ブランケットを掛けると、再びハンドルを握り直しました。

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しばらく農道らしき道をひたすら走り続けていましたが、気がつくと、国道4号線から大きく左にそれ、いつの間にか、海沿いの県道に変わっていました。

起伏の激しい片側一車線。

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既に日は落ち、辺りは海と空の区別がつかないほど闇に閉ざされ、対向車は、一、二台しか通りません。路面も舗装されてはいるものの、凸凹していて、ゆるい傾斜にハンドルが取られます。フラットな状態ではありません。この道は、幹線道路でないことが、すぐに分かりました。

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路面ギリギリまで打ち寄せる波。

時折、闇の中に白く高く上る波しぶき。

日が落ちた後の海が、こんなに不気味だとは思いもよりませんでした。

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私は、ふと、今日が盆の入りであることを思い出し、再び高速を降りてしまったことを後悔し始めました。

「盆の頃、海に近づいてはならない。」

この時期、必ずと言っていいほど聞く言葉です。

「車の中だし。海の中に入って泳ぐわけでもないから大丈夫。迷信迷信。」

そう言い聞かせ、ラジオのスィッチを入れました。

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スピーカーから、ユーミンの名曲「中央フリーウェイ」が流れてきました。

首都高速の混雑と渋滞を思い起こしながら、軽妙なリズムに合わせ口ずさんでいるうちに、多少の起伏と勾配のある田舎道もさほど気にならなくなってきました。

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緩いカーブに差し掛かった時、沖に一艘の屋形船が停泊しているのが見えました。

舟の周りには提灯が灯り、海面をゆらゆらと明るく照らしておりました。

目を凝らしてみると、船の中では、宴が催されているようです。

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お囃子に合わせ、棒の先に丸いお椀のついた杓を手に、嬉しそうに舞を踊る人影が見えました。

やがて、船全体を包み込むように、水色の羽衣が、海風に吹かれながら、右に左にふわふわと宙を舞いながら漂い始めました。

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幻想的な光景は、お盆に飾る走馬灯のようで、眩いばかりの美しさに、私は、思わず息をのみました。この小さな田舎町が主催するお盆のイベントなのかもしれない。思い出にしばし、眺めていようと思いたち、ラジオのスイッチを切り、車をガードレース脇に止め、窓を全開にいたしました。

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すぅと湿り気を帯びた生ぬるい海風とともに、

「おーい。」という微かな声が聞こえてきました。

屋形船の上から黒い人影が、こちらに向かって手を振っています。

一人、二人…人影は、次々と増えていきます。

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「おーい。」

「…来いよぉ。」

「こっちに…来いよぉ。」

「おーい。」

え?

おかしい。

あんなに遠く離れた場所にいるのに、声が、だんだんとこちらに向かって近づいてくるのです。

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そもそも、沖に停泊している船や乗船している人たちが、暗い夜の海で、こんなにはっきりと見えるはずがありません。

提灯の大きさは、伸び縮みする風船のように変化し、灯りも、暗くなったり明るくなったりと不安定になりだしました。どうも様子がおかしいのです。

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船を取り囲むように舞っていた羽衣と思しきものは、よく見ると、破れてボロボロになった帆柱の残骸のようでした。

もはや、この世のものとは思えません。

手元の時計は、22時を指しています。

海岸沿いを走り出してから、既に2時間以上が経過していました。

イベントならとっくに終わっているはずです。

全身が泡立つような怖気と悪寒に襲われ、私は大急ぎで窓を締めました。

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その時、後部座席でおとなしく眠っていた息子が、ギャァァァと大声を上げ、激しく泣き出しました。

ドン!

ドンドンドン!

ガードレール側の後部座席の扉(ドア)が 数回叩かれ、

「おい!」

「おい!」

と嗄れた太い男の声がしました。

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声のする方に身体を向けると、車の扉(ドア)の向こうに、真っ黒い人影が立っているのが見えました。

後部座席の扉(ドア)とガードレールの隙間に、人が立てるほどのスペースはありません。

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私は、これ以上ないというくらいアクセルを吹かし、その場を走り去りました。どこをどう走ったのか覚えていません。

途中、ロー○ンを見つけ、駐車場から夫に電話し、迎えに来てもらいました。

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夫の実家にたどり着いた時は、深夜1時を回っておりました。玄関先では、舅と姑が心配そうに気をもみながら私達の到着を待っていました。

「どうしたの。携帯は通じないし。何かあったんじゃないかって心配したよ。」

憮然とする夫の家族を前に、私は、息子を布団に寝かせ、無事家についた安堵感から、声を上げて泣き出しました。

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取り乱した私を見て、

「まぁ、今晩は、長旅ご苦労様でした。これを飲んで、早く休みなさい。明日、一緒にお墓参りに行きましょう。」

姑は、優しく私の肩を叩き、立派な神棚の有る客間に案内してくれました。

そこには、フカフカの布団が
敷かれ、私は、着替えを済ませました。

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「一体何が会ったの。運転に慣れている君が、道に迷うはずがない。あの場所は、昔から良くない場所と言われていてね。そりゃ、ここには一番の近道だけど。地元でも関係者以外は、めったに人が入らない場所なんだよ。」

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夫は、事件性を疑ってるようでした。

私は、黙っていようと思いましたが、意を決して一連の出来事を順を追って話すことにしました。

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例の屋形船の話をしたとたん、

夫は、顔面蒼白になり、、

「父さん、母さん、起きてくれ。ゆかりちゃんが、ゆかりちゃんが、盆の船に魅入られた。」

と大声で叫びました。

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「なんだって。」

「なんてこった。よりによって・・・。」

仏間と居間から舅と姑の発する悲鳴にも似た怒声が聞こえてきました。

「今日は、盆だぞ。それも迎え盆だぞ。盆の入りだ。」

「そもそも、どこをどう走れば、□■海岸に出るんだ。」

「すみません。道がわからなかったものですから。ナビの通りに…走ったんです。そしたら、いつの間にか、海岸沿いを走っていて。」

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「わからないって、どういうこと?」

姑は、真っ青になって、唇をワナワナと震わせ、詰問してきました。

舅は、姑を宥めながら、

「一番辛いのは、ゆかりさんだ。問題は、そこじゃない。」

ゆっくり穏やかに聞きました。

「ゆかりさんが見た黒い人影は、何人だった?」

「3人以上はいたと思います。正確には分かりません。でも、大人数ではありませんでした。はっきりと見えませんでしたが、5人程度かと。」

「話したのか?」

「話してはいません。おーいって、船から手を振っていました。」

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「それから。」

「……」

「△△(息子の名前)は、見てないんだな。」

「多分、見てないと思います。寝ていましたから。」

「気づいてないのね。」

「それは、わかりません。異様な気配を感じ取ったのか、大声で泣き叫んでいました。」

夫は、ふぅと大きなため息をつきました。

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「手は、振り返したの。」

「していません。するわけないです。どうしてそんな事を聴くんですか。」

私は、姑に咎められているような気がして、きつく言い返してしまいました。

私が質問に答える度に、険悪な空気が流れ、その場にいる誰もが、冷静さを失っていました。

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「あと、なにか言われたか。」

「こっちに来いと。」

「呼ばれたのか。」

こくり と首を縦に振り下ろしました。

「それから。」

「船の中では、柄に丸い皿のようなものがついた杓を持って、踊りを踊っていました。あまりの美しさに思わず見とれてしまいました。」

「それから、羽衣のような その時は、とてもきれいに見えたんですけど、よく見ると羽衣なんかじゃなくて、ボロボロなった帆柱の残骸でした。それが、何枚もの布が折り重なるかのように風をはらんで漂うように見えました。」

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夫は、

「流石だねぇ。職業柄、描写力表現力、なにより、臨場感たっぷりのお話ありがとうだ。」

と皮肉ともとれる口調で、泣き笑いし始めました。

舅と姑は、天井を見上げ、顔を覆ってしまいました。

「宴会は、お開きまで見てしまったんだね。」

「お開き?」

あぁ、あの美しい走馬灯のような幻想的な情景のことか。

「要するに、宴会の最後の締めまで見ちゃったってわけだ。お開きは、最後の最後真の姿まで見せるってことだ。」

舅と姑の嗚咽が辺りに響き渡りました。

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「車の窓の外に、黒い人影が数人立って。」

「車の扉がドンドンと叩かれて。」

「おい!って男の声がして。」

話を続けようとする私に、

「もういい。分かった。俺も悪かった。こんなことになるなら、3人で来るんだったよ。」

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夫は、唇を噛み締め、舅と姑の肩を強く抱き、

「悪い、俺たち逃げるわ。もうすぐそこまで来ているかもしれないから。」

「命あっての物種だ。」

「そうね。早く、できるだけ遠く、山を通っていくのよ。」

「わかった。そうする。とりあえず、ゆかりちゃんの実家に身を寄せるわ。」

「それがいい。」

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「さぁ、早く。急ぎなさい。私達のことなら、心配しないで。」

「分かった。落ち着いたら手紙か電話で知らせる。元気で暮らせよ。」

「△△くんは、もう、まともに育たないかもしれん。ゆかりさんと二人、生涯、死ぬ気で守ってやってくれ。」

舅が顔を覆ったまま絞り出すような声で話しました。

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それに重ねるように、姑が、話します。

「生きている人間のほうが強いの。そう言い聞かせて、気を強く持って頂戴ね。負けたらだめよ。あなた方は、親になったのだから。」

まるで今生の別れとばかりに、二人は、目を真っ赤に腫らし肩を震わせ泣いていました。

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夫は、眠る息子を再びチャイルドシートに乗せると、着替えもそこそこに、強引に車に引き戻され、ただ呆然とする私を前に、

「詳しいことは後から話す。とにかく、君と△△は、ここにはいられないんだ。二度とここには、来てはいけないんだ。」

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夫は、運転席に腰を下ろすと、涙を拭い、エンジンを掛け、なにかに怯え気遣うように、ゆっくりと車を走らせました。

私と息子は、たった今、訪れたばかりの夫の実家を後にしました。

もう二度と訪れることのない家。

時刻を確認する元気もなく、私は、目を閉じ、眠りに落ちました。

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東北自動車道に入る頃には、日はすっかり高く上っていました。

近くのパーキングエリアで、冷たい飲み物を購入し、夫と私は、サンドイッチを口にしました。

息子も、変わった様子はなく、授乳が終わりお腹が一杯になったのか、いつもと変わらぬ笑顔で応えてくれました。

それまで、無言を貫いていた夫も、やっと重い口を開き、言いにくそうにしてはいましたが、ぼちぼちと語ってくれました。

―――――――――――――――――――――――――――――――

以下、夫の話です。

常体で書かせていただきました。

私が見た屋形船は、「盆の舟」と呼ばれ、年に一度の盆の入りに、日が完全に落ちてから忽然と沖に現れると言
われている。

要するに、あの世とこの世をつなぐ 定期便のような船らしい。

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(「船」と「舟」どちらの表記が正しいのかはわかりません。諸説ありとのことでしたが、便宜上、ここからは、「船」に表記を統一しますが、表題は、「舟」とさせていただきます。)

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あの世から死者たちを乗せ、一年に一度 盆の入りに来て、盆中ずっと沖に停泊し、盆明けの夜明け前、死者を乗せ、またあの世に帰っていく。

古(いにしえ)より、この世とあの世の「渡し船」の役割を果たして来たのだと。

盆の船に乗れる人は、一周忌を迎えたばかりの人で、「自死」を除いた「寿命を全うせずに亡くなった人」だけに限られる。

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定員については毎年変わると言われ、その年に乗れる人数は制限があるらしい。

ところが、毎年、懐かしい家族やかつての恋人に相見(まみ)えると、舟に戻らず、そのまま現世に留まろうとする者が必ず出てくるのだそうだ。

行きと帰りで人数が違うと、船はあの世に戻れなくなり、この世を彷徨うことになる。死者たちは、二度とあの世に戻れないらしい。

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ところが、死んだ者の中には、盆中に自分の身代わりを見つけ、船に乗せようと良からぬことを考える輩も居る。

船を司る船頭は、数さえあっていれば良く、行きと帰りとで、乗船者の顔ぶれが変わろうと一向に頓着しないとのこと。

良からぬことを考える輩のすることは、この時期、海に近づいた者たちを海難事故と見せかけて殺し、自分たちの身代わりとして盆の船に乗せ、あの世に送り帰す。らしい。

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以前は、海難事故だったんだが、最近は、交通事故を装うことが多いらしい。一度に何人も殺せるからだ。

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実際、2年ほど前、錆びたガードレールを乗り越えて、すぐ下の崖にダイビングした家族が居た。

ワンボックスカーに5人が乗っていたらしい。

お盆に一家で帰省していたんだろう。

ひとりだけ生存者が居たんだが、その人の話してくれた内容が、まさしく 君の言ったこととほぼ同じだったというわけだ。

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対処法は、ないと言っても良い。

敢えてあげられることといえば、

盆に限らず、二度と海に近づいてはならない。

それと、この事を知る人間と、今後絶対に会ってはならない。

(電話で話す分にはいいらしい。)

輩たちに気付かれないように、住むところは、海や川のない場所にする。

ぐらいだ。

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この盆休みを利用して、アパートを解約し、奥羽山脈の麓近くにある 私の実家に引っ越すと。

山までは、流石に追いかけては来ないだろうから、その方が安心なのだ。

それと、中でも、身代りに選ばれる者は、弱いもの。年端のゆかないもの。魂の美しいものが選ばれやすいのだという。

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以上が、夫の話してくれた全容です。

話を聞き終わり、私は、私の胸ですやすや眠る息子を ギュッと強く抱きしめました。

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「あくまでも、都市伝説さ。母さんも言っていただろう。生きている人間のほうが、ずっと強いって。」

私は、別れ際、舅が言った言葉が頭から離れませんでした。

「この子は、もうダメだろうって。お父さん話していたけど。それは、さっき、貴方が言ったようなことと同じ理由。」

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夫は、厭な顔をしましたが、話さなければならないのかなと前置きし、次のような話をいたしました。

「良からぬ者たちは、若い女や子どもを好むらしい。それと、過去、盆の船に連れて行かれそうになった乳飲み子がいたんだが。その子は、一生寝たきりで過ごした。というわけだ。」

「ま、気にするときりがない。それこそ、あいつらの思うツボだろうから。君はもう母親だ。俺も父親になった。前だけを向いて行こう。」

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サービスエリアで小一時間ほど休憩し、私達は、私の実家へと向かいました。

高速に乗り、私は実家の母に電話しました。

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「あ、お母さん、急にごめんなさい。これから、そっちへ行くから。

うん、いいの。うちとは、宗教違うから。それに、うちは、お盆関係ないでしょう。

だから、お願い行ってもいいでしょう。しばらく、泊めて。それから、大事な話があるの。お父さんはいる?うん、和也さんも△△くんも一緒だから。待っててね。一時間もしたら着くと思う。」

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昨年8月下旬から、私達は一家三人、私の実家でと私の両親と一緒に暮らすことになりました。

元の仕事を何とか見つけ、夫も地元の企業に再就職が決まり、田舎暮らしも板についてきた頃。

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そう、盆の船を見た13日盆の入りから数えること1年。深夜2時過ぎ、夫の携帯に、義弟から着信がありました。

盆の入りの昨夜、舅と姑が ふたり揃って海で亡くなったとの知らせでした。

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このような事情があったとはいえ、両親の死に目にも、葬儀にも出席できない夫が不憫でなりません。

私は、ごめんなさいと涙を流しながら、何度も何度も謝りました。

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夫は、静かに首を横に振り、誰に聞かせるともなく語り始めました。

―ふたりは、今頃、「盆の船」に乗っているよ。

―まぁ、ひとり足りないけど。

―それは、仕方ないさ。

ー俺は、どうなっても構わない。

ーあいつらには、負けない。

ーたとえ、どうなろうとも、必ず…

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(聞こえないわ)

夫は、微笑むと静かに瞼を閉じ、全てを悟りきったかのように合掌しました。

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