【第七大奇迹】木石

wallpaper:138一个夏天的晚上,我和我的学长——我所在的文艺社团长——在一起聊天,我正要离开学校。 在途中的一家便利店,我买了Garigari君,店长买了一罐冰咖啡降温。 下一页还是很热。 午后的阳光灼伤了我从短袖制服和柏油马路上伸出的双臂,试图挤出我身上的湿气。 下一页我不喜欢夏天。因为它很热。 那也不代表我喜欢冬天的寒冷。 春天,我得了花粉症,经常流泪流鼻涕。 在日本,没有一个季节是我擅长的。 嗯,夏天的炎热对我来说尤其糟糕。 下一页不过,和我相反的是,走在我身边的总经理一

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一个夏天的晚上,我和我的学长——我所在的文艺社团长——在一起聊天,我正要离开学校。

在途中的一家便利店,我买了Garigari君,店长买了一罐冰咖啡降温。

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还是很热。

午后的阳光灼伤了我从短袖制服和柏油马路上伸出的双臂,试图挤出我身上的湿气。

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我不喜欢夏天。因为它很热。

那也不代表我喜欢冬天的寒冷。

春天,我得了花粉症,经常流泪流鼻涕。

在日本,没有一个季节是我擅长的。

嗯,夏天的炎热对我来说尤其糟糕。

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不过,和我相反的是,走在我身边的总经理一脸的冷峻。

现在她把长发扎成了马尾辫。

它走路时,黑色的尾巴微微摆动。

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“老大,你看起来一点都不热,你很会热吗?”

当我问的时候,老大的手帕他接过把罐装咖啡包在饼干里,从嘴里拿出来,转向我。

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“没有啊,我也不喜欢热的吧?不就是夏天感冒吗?你发烧什么的……”

听到我的问题,导演笑着摇了摇头。

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昨天,我半夜去隔壁镇散步。

上个月,多人自杀-租户大楼。

一家废弃的弹珠机店的老板在商店所在的大楼上吊自杀。

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好吧,你不能当时什么都没看到,是吗?我什么也没听到。

没有可疑的人影,没有呻吟声,没有坠落的脚手架,没有吱吱作响的绳索,什么都没有——”

轻轻地看看身后。

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不知道你有没有带?

“闹鬼”可能更正确。

但是,与其紧贴着身后,不如保持一定的距离,跟在后面。 ――你是一个很害羞的人。

因此,我从昨天开始就脊背发凉。看。鸡皮疙瘩。”

导演向我展示了他修长白皙的手臂。

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我回头看。

被夕阳染红的居民区街道。

我们是唯一的过客。

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但是你知道的。

一只白皙的手从埋在墙影里的电线杆后面探出头来。

背后有人。

按理说,我可能会怀疑是跟踪狂或可疑人物。

但是那是-

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“嘿?位置很奇怪,不是吗?

大约三米,不是吗?那只手的位置。

在没有脚手架的情况下,你只能看到你的手是不正常的。“

–这很有趣。

说着,导演把手放到嘴边,咯咯地笑了起来。

一如既往。

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当我们接近一个有一个大池塘的公园时,我们在池塘边的长椅上坐下。

从公园的树丛中,即使是傍晚,仍能听到聒噪的蝉鸣声。

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傍晚的阳光下,近处可以看到成群的水鸟,远处可以看到情侣划艇在水面上。

隔着池塘,我可以看到一座正在建设中的巨大公寓楼。

在该物体旁边,一台巨大的起重机正在将钢架等建筑材料运送到上层。

–Cone, cone…

木桩被打入时发出悠长的声音。

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最后,我们身后的追兵依旧。不要超过必要的距离。

注意到它的存在,我也受益于它的降温效果。

我脊背发凉。还不够凉爽,对身体不好。

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我们一直在胡说八道,经理突然低声开口。

目光不是落在坐在旁边的我身上,而是落在池塘上。

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我问:“怎么了?”

顺着小路,就可以看到正在建设中的公寓楼。

这是自然的景象。没有什么问题。

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但下一刻,世界安静了下来。

然后,就像电影画面飞舞一样,完全不同的一幕突然跳进了我的视野。

只有框架的高层公寓。

它的侧面——

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一只巨大的虫子紧贴着它。

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摇晃

“什——!?”

我倒吸一口冷气。

它很大。

太大了。

它的体积之大,几乎盖住了一座二十层左右的高层公寓楼的墙壁。

焦糖色,圆形。

以我对昆虫的认识,那就是——

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如海浪拍打沙滩,声音回归人间。来吧。

一声雷鸣般的叫声从树丛中传来,如倾盆大雨。

–Mean, Ming Ming Ming…

–Ming, Ming Ming Ming Ming…

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“……蝉,幼虫?”

是的,导演微微点头。

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“你一直在我的视线里。我没有注意到。

也许是刚好‘专注’了,也可能是天生——”

不知道‘天生’这个说法对不对。。经理说。

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“那到底是什么?”

我惊呆了。经理夸张地叹了口气。

“你知道……我不是什么都知道,对吧?”

连我都没见过这么大的东西,也不知道是什么东西。

Just–“

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这听起来很不祥,经理喃喃地说。

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从那天起,我们决定在回家的路上参观一下这座建筑。

建筑的建造一天天在进行,幼虫也随着进度而变化。

具体来说,一开始,它的圆背出现了一道裂痕。

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裂缝垂直扩大,没过多久,一具乳白色的身体从里面出现。

就像我们熟悉的蝉蜕皮一样。

除了它的庞大规模,除了我们之外没有人知道它的存在。

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蝉在多日的时间里慢慢地从壳里爬出来,直到它开始伸出卷曲的翅膀,紧贴着壳的背面。

那纯白的身影,美若天仙。

已经完全变成成年的蝉的身体,逐渐开始变色,最后飞了起来。站起来的日子似乎快到了。

从我们第一次发现它到现在已经过去了两个月。

随着公寓的竣工,许多新居民来到了这个小镇。

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一天。

那是在教室下午的课时。

shake

――Do-mon …… Sugizu ……

我听到远处有一小块区域在摇晃。

教室变得嘈杂起来。

数学老师让同学们冷静下来,嘱咐他们好好学习,说:“我去查查情况。”然后离开了教室。

老师一消失,同学们就吵起来了。

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有的人站在窗边向外张望,有的人拿出手机搜集信息,有的人开始闲聊。

我一边盯着同学们一边想在办公桌上小睡一会儿。

直到最近,追兵才不见踪影。不知他是否成佛了。

因为心事重重,所以晚上睡得很浅。我因此而睡眠不足。导演好像睡着了。

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可我还没睡着,老师气喘吁吁地回到了教室。

并告诉大家。

“这是前几天刚盖好的高层公寓,好像已经倒塌了——”

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在公园里,在池塘边的长椅上,我和经理正在搜寻一个倒塌的公寓楼。我在看。

巨蝉不在。

“这次倒塌,公寓里好像死了很多人……”

经理一脸悲痛的喃喃道。

废墟下还有很多人失踪。伤亡人数还会进一步上升。

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“……导演,那只蝉到底是什么?”

我疑惑。

难道是只有我们能看到的那只蝉引起了这件事吗?是吗?”

我自己说的时候,我有一些对我来说没有意义的事情。

那只蝉确实如导演所说,给人一种不祥的感觉,但同时又给人一种凄美的感觉。

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“我认为是在这次崩塌中死去的人的灵魂,就像他们的集合一样。”

导演说,从板凳上站起来。

“不是……那个蝉从施工开始就一直在对吧?”

今天出事了,然后到处都是。”

>

这不可能吗?导演面对池塘回答。

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“大楼倒塌的时候,我听到教室里传来轰隆隆的土声。蝉鸣声。

看起来很伤心。” 和这是一个痛苦但美丽的声音。

一定是这样。”

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从我身后的树丛中,日暮合唱团是。

夏天快结束了。


作者:綿貫一
原文:【セブンスワンダー】蟲

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ある夏の日の夕方、俺と先輩――俺の所属する文芸部の部長――は、話をしながら一緒に下校していた。

途中のコンビニで、俺はガリガリ君を、部長は缶のアイスコーヒーを買って、それぞれ涼を取っていた。

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それにしても暑い。

西日はジリジリと、半袖の制服から伸びた腕とアスファルトの路面を焼き、俺の身体から水分を搾り取ろうとしていた。

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夏は苦手だ。暑いから。

かといって、冬の寒さが好きなわけでもない。

春は花粉症で涙と鼻水が止まらず、秋は朝晩の気温が下がってきた頃に必ずと言っていいほど風邪をひく。

日本の四季の中で、俺が得意な季節はひとつもない。

まあ、中でも夏の暑さは特に苦手だった。

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しかし、そんな俺とは対照的に、隣を歩く部長は涼しい顔をしていた。

今は長い髪をまとめて、ポニーテールにしていた。

歩くたびに黒い尻尾が小さく揺れる。

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「部長、なんか全然暑そうじゃないですね。暑いの、得意なんですか?」

俺が尋ねると、部長はハンカチを巻いた缶コーヒーを口から離して、こちらを向いた。

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「ううん。私も暑いのは苦手だよ?でも今はちっとも暑くないの。むしろ、寒気がするくらい」

「夏風邪じゃないですか?熱とかあるんじゃ……」

俺の問いに、部長は小さく笑って首を振る。

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「昨日ねぇ、夜中に隣町まで散歩に行ったの。

先月、自殺があった雑居ビル。

【第七大奇迹】木石

潰れたパチンコ屋のオーナーが、店舗のあったそのビルで首をくくったんだって。

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ううん、その時は何も視えなかったよ?何も聞こえなかった。

怪しい人影も、うめき声も、足場の台が倒れる音も、縄がきしむ音も、なにもなかったんだけど――」

ちらりと背後を振り返る。

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「連れて来ちゃったのかな?

『憑いてきた』の方が正しいかも。

でも、背中にべったりじゃなくて、一定の距離を空けて、後ろをずっと付いてくるの。――とってもシャイな人なのね。

おかげで昨日からずっと背筋が寒くって。ほら、見て。鳥肌」

部長はすらりとした白い腕を、俺に見せてきた。

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俺は背後を振り返る。

夕焼けに染まった、住宅街の通り。

通行人は俺たちの他にない。

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しかし、気が付く。

塀の影に沈んだ電柱の陰から、白い手が覗いていた。

あの後ろに誰かいる。

普通なら、ストーカーや不審者を疑ったかもしれない。

でも、あれは――

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「ねぇ?変な位置でしょう?

3メートルくらいだよね、あの手の位置。

あんな、足場もなにもないところに手だけ視えてるって、やっぱり普通じゃないよねぇ」

――おかしぃ。

そういって、口元に手を添えて、くすぐったそうに部長は笑う。

いつものように。

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大きな池のある公園に差し掛かったところで、俺たちは池のほとりのベンチに腰を下ろした。

公園内の木々からは、夕方だというのに、まだ騒がしいミンミンゼミの鳴声が響いている。

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夕日に輝く水面には、近くに水鳥の群れ、遠くにカップルの乗った何艘かの手漕ぎボートが見える。

池の向こうには、建設中の巨大なマンションが見えた。

まだ骨組みだけのその建物の横には、これも巨大なクレーンが鉄骨などの建築資材を上層へと運んでいた。

――コーン、コーン……

杭を打ち込む間延びした音が響いてくる。

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結局、背後の追跡者はそのままだ。必要以上に距離を詰めてはこない。

その存在に気が付いたことで、俺もその冷却効果の恩恵に与っている。

背筋がゾクゾクする。あまり身体に良さそうな涼しさではない。

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俺たちはしばらく下らない話をしていたが、唐突に部長が「あ……」と小さく声を上げた。

その視線は横に座った俺ではなく、池の方に向いている。

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「どうしたんです?」と俺が尋ねると、「気づかない?」と部長は指差した。

その先をたどると、先ほどから見えている建設中のマンションが見えた。

自然な光景だ。どこにもおかしなところはない。

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だが次の瞬間、世界から音が消えた。

そして、フィルムのコマが飛んだように、全く別の光景が突然俺の視界に飛び込んきた。

骨組みだけの高層マンション。

その側面に――

sound:18

巨大な蟲が取りついていた。

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shake

「なっ――!?」

俺は思わず息を飲んだ。

巨大だ。

デカすぎる。

二十階建てくらいの高層マンションの、その壁面をほぼ覆い隠すほどの巨体。

焦げたキャラメルのような色、背を丸めたフォルム。

俺が持っている昆虫の知識では、あれは――

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浜辺に打ち寄せる波のように、世界に音が戻ってくる。

木々から降り注ぐ、夕立のような騒がしい鳴声。

――ミーン、ミンミンミン……

――ミーン、ミンミンミンミンミン……

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「……蝉、の幼虫?」

そうだね、と部長は小さく頷いた。

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「さっきからずっと視界に入っていたのに、気が付かなかったねぇ。

たまたま『ピント』が合ったのか、それとも、たった今生まれたものなのかもしれないね――」

『生まれる』っていう言い方がいいのかどうか、わからないけど。部長は言った。

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「あれは一体、なんなんですか?」

呆然としながら、俺は問いかける。部長が大げさにため息をつく。

「あのねぇ……、私がなんでも知ってるわけないでしょう?

私だってあんな大きなモノ初めて視たし、あれがなんなのかなんてわからないよ。

ただ――」

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不吉な感じがするね、と部長はつぶやいた。

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その日以来、俺たちは帰り道にそのビルを観察することにした。

日々、ビルの建築は進み、その進捗に合わせるかのように、幼虫も変化していった。

具体的には、はじめ、その丸まった背中に亀裂が入った。

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その亀裂は縦に大きく広がっていき、やがて、中からミルクのように白い身体をした中身が現れた。

その様子は、俺たちのよく知る蝉の脱皮、そのものだった。

ただし、その大きさが桁外れだということと、俺たち以外誰もその存在に気が付いていない、ということを除いては。

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蝉は何日もかけてゆっくり殻から這いだし、やがて抜け殻の背に取りついたまま、縮れた羽を伸ばし始めた。

真っ白なその姿は、まるで妖精のように美しかった。

姿がすっかり成虫のそれになった蝉の身体は、やがて徐々に色づきはじめ、いよいよ飛び立つ日が近づいているようだった。

俺たちが初めてそれを見つけてから、二ヶ月が過ぎていた。

マンションも完成を迎え、多くの入居者が新たにこの街にやって来ていた。

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ある日のことだった。

教室で午後の授業を受けている時だった。

shake

――ドォーーーーン……ズズズ……

揺れとともに、どこか遠くから小さな地鳴りが聞こえてきた。

教室内は騒然となった。

数学の教師は、生徒たちに静まるように言ってから自習を指示し、「状況を確認してくる」と言って教室を出て行った。

教師の姿が見えなくなるやいなや、クラスメイトたちはザワザワと騒ぎ出した。

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窓辺に寄って外を眺める者、携帯を取り出して情報を集める者、まったく関係ない世間話をし出す者。

俺はそんなクラスメイトたちをしり目に、机につっぷして昼寝を試みていた。

近頃ようやく、例の追跡者の姿が見えなくなったのだ。成仏してくれたのだろうか。

なんとなく気になっていたせいで、夜の眠りがずっと浅かった。おかげで寝不足だ。部長は安眠していたらしいが。

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しかし教師は俺が眠りにつく前に、息を切らしながら教室に戻ってきた。

そして、皆に告げた。

「先日建ったばかりの高層マンションな、あれが倒壊したらしい――」

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公園の、池のほとりのベンチで、俺と部長は倒壊したマンションの残骸を眺めていた。

そこに、あの巨大な蝉の姿はなかった。

「今回の倒壊で、マンションの入居者が大勢亡くなったらしいねぇ……」

部長が沈痛な表情でつぶやく。

まだ、瓦礫の下に多くの行方不明者がいるそうだ。犠牲者の数はさらに増えるだろう。

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「……部長、結局あれは、あの蝉はなんだったんでしょうか?」

俺は疑問を口にする。

「俺たちにしか視えなかったあの蝉が、今回のこの事件を引き起こしたんでしょうか。

それなら、あれはそういう災厄をもたらす、化物みたいな存在だったんでしょうか」

自分で口にしながら、俺はその言葉に腑に落ちないものを抱えていた。

あの蝉は、確かに部長が以前言ったように不吉な感じもしたのだが、同時に物悲しく、そして美しいとも感じていたからだった。

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「私が思うに、あれは今回の倒壊で亡くなった人たちの魂、その集合体みたいなものだったんじゃないかな」

部長はベンチから立ち上がりながら言った。

「そんな……。あの蝉は建築中からずっといたんですよ?

事故が起こったのは今日で――それじゃ因果があべこべだ」

そういうこともあるってことじゃない?部長は池の方を向いたまま応える。

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「ビルの倒壊が起こったとき、私、教室で地鳴りと一緒に聞いたんだ。蝉の声。

すごく悲しそうで、辛そうで、でもきれいな声だった。

あれはきっと、そういうモノだったんだよ」

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背後の木々から、ヒグラシの合唱が聞こえている。

夏が、過ぎ去ろうとしていた。

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