◇绑蟹◇

命运的红线。 你信吗? 具体的我也不知道,不过好像起源于中国的一个关于婚神的故事,据说有朝一日注定要结婚的一男一女有了一条看不见的红线系在他们的脚踝上。 在日本,格式略有不同,每只手的小指都系着一根看不见的红绳。你们都知道命运的红线就是这条。 但我所知道的命运红绳两者都不是。 我第一次亲眼目睹这种现象是在我刚进入高中的时候,我和来年同甘共苦的同学们一个一个站在教室里做自我介绍。 就在其中一个男学员自我介绍的时候,坐在他面前的女学员脖子后面长出了一根红线。紧接着,他的后颈处也长出了一根丝线

命运的红线。

你信吗?

具体的我也不知道,不过好像起源于中国的一个关于婚神的故事,据说有朝一日注定要结婚的一男一女有了一条看不见的红线系在他们的脚踝上。

在日本,格式略有不同,每只手的小指都系着一根看不见的红绳。你们都知道命运的红线就是这条。

但我所知道的命运红绳两者都不是。

我第一次亲眼目睹这种现象是在我刚进入高中的时候,我和来年同甘共苦的同学们一个一个站在教室里做自我介绍。

◇绑蟹◇

就在其中一个男学员自我介绍的时候,坐在他面前的女学员脖子后面长出了一根红线。紧接着,他的后颈处也长出了一根丝线,两根丝线犹如活物般纠缠在一起,最终变成了一根丝线。

他们在那一刻坠入爱河,尽管他们甚至没有说过话。所谓一见钟情。不久之后,两人开始交往,并成为学校里的一对热辣情侣。我听朋友说他们关系还不错。

我以为命运的红线从一开始就拴在我身上,但似乎并不是这样。线程的绑定似乎需要一些条件。

这只是我的推测,但我认为两个条件是“相遇”和“感情”。当两个人相遇并互相想起对方时,就会出现一条线,将他们联系在一起。你的意思是说命运不是一开始就决定的,而是你自己发现的?命运似乎也并不容易。

我不知道他们会发生什么,但据我所知,他们会从此过上幸福的生活。因为我的祖父和祖母被那根红线绑住了。祖父死后,线断了,但线一直系着,直到死亡将我们分开。

而且,可悲的是,我的父母并没有通过红线连接。这条红线不一定连接两个相爱的人。或许说“同居”是条件之一吧。

因此,我所知道的命运红线有点令人毛骨悚然和古怪。

这似乎是一种罕见的现象,我很少看到用红线绑在一起的情侣。嗯,对我这个用线能看得遍地都是的人来说,真是碍眼啊。据我所知,我已故的祖父母,一个高中同学,还有一对。我母亲的妹妹,我的姑姑和她的丈夫,就是用这根线绑在一起的。

我从小就可以看到鬼魂和妖怪。但是,在知道除了我没有人能看到之后,我就把它保密了。我敢肯定,如果你与人交谈,他们会认为你疯了。我不喜欢那样…

那年的盂兰盆节,得知红线的原理,我们一家人就回了外婆家。自从我祖母去世后,我姑姑和她丈夫就住在那所房子里,我每年都盼着来这里几次。

原因是可以见到心爱的阿姨和老婆。

“Riyu-chan,欢迎回家。我的侄女一如既往的可爱。”

每当我看到阿姨时,她总是这样说。他拥抱我,抚摸我的脸颊,抚摸我的头。

阿姨没有两面性,和蔼大方的性格就像我的外婆。 Chinami 的母亲像她的祖父一样固执和不友好。

我的阿姨,很喜欢孩子,从小就很疼我这个外甥女。我姑姑自己没有孩子,也许正因为如此,她对我的爱是巨大的。

他给我买了各种各样的东西,不仅是生日和圣诞节,还有没有其他事情发生的日子。我吵架了。

这是一场一对一的战斗,妈妈说“别宠我”,姨妈说“我要宠你”。

吵了半天,我答应阿姨,每年只在我生日的时候送我一次礼物。结果,我的房间里堆满了姑姑送的礼物。特别是花哨可爱的毛绒动物到处都是。

当我的朋友们第一次来我的房间时,他们经常说“这和我想象的不一样”。毛绒玩具确实不是我的爱好,但女孩子可能会有一两个。

他对我有什么样的印象?

姑姑的老公也是一个很善良的人,让人唏嘘。但是当我遇到他时,他总是给我一些零花钱。那时,我收到了一个印有可爱插图的小袋子。

我试着拒绝,说:“我已经不是小孩子了。”

我老公小时候在补习班教过书,所以他来这里的时候,经常叫我去学习。在中考的时候帮了大忙。

他们是一对深受街坊邻里欢迎的普通话夫妻,不可否认他们的关系非常融洽。我想让我的父母效仿那种互相关心、互相照顾的感觉。要不我偷偷把指甲上的泥煮沸,让他喝?

上完香坛,坐到廊下,眺望花园。来到这里的另一件有趣的事是这个。

我在这里和我的祖母进行了多次交谈,她是唯一知道我能看到的人。当我告诉祖母我看到的各种怪物时,她的表情很温和。外婆还给我讲过她小时候看到的鬼怪故事。我们谈了很多其他事情。

这是一个珍贵的地方,充满了我和祖母的许多回忆。所以我很期待来到这里。

然后阿姨走过来,在我旁边坐下。

“Riyu-chan,你以前在这里和你奶奶聊天。也许她现在就坐在你旁边。”

阿姨是这么说的。但旁边不是我奶奶大部头书。

虽然我能看见,但我从未在我的家人中遇到过鬼魂。

据说在盂兰盆节时,祖先会回来,但我从未见过祖先的灵魂。我看到的大多数灵魂都是死于事故或死后留下怨恨或嫉妒的人。

比如有轮回轮回的话,不知道我的祖宗是不是都已经重生了,一个也不会回来了。那么盂兰盆节到底是什么?我不是那个领域的专家,所以我无从得知。

“不知道,今天是里游酱最喜欢的生鱼片和天妇罗,敬请期待。”从你面前走过。

从我记事起,我的祖父母和我的姑姑、妻子就被一根红线联系在一起。木板。后来知道了命运红线的存在,还以为从一开始就系上了。但是,当我亲眼目睹同学被一根线绑起来的那一刻,我才第一次知道了线的来历。

我从来没有见过这个线程纠缠在一个奇怪的东西上。有一次,我和阿姨去逛街,想了解纱线的工作原理。姑姑的老公回家了,姑姑坐车去了很远的一家超市,但是线一直在长,没有断。

然后线从他们中间滑过,无视任何障碍。我想看看我能不能摸到它,但我从来没有摸过红线,因为我想,“如果线因为我而断了怎么办?”

而我很好奇的是,一直延伸到现在的线程会发生什么。应该是按公斤来拉伸的,所以从这里回到家,比包里的耳机线还乱。

但由于某些原因它没有。当我回到家时,线像卷尺一样回到了合理的长度。与妖怪一样,这条线也很神秘。关于红线,我只知道它是如何系起来的(只是我的猜测)以及线断的那一刻。

……不,不止这些。

关于这个话题我还知道一件事。

Riyu酱,你今天要回家吗?……”

阿姨离开我的时候总是这样。他拥抱我,抚摸我的脸颊,我仍然被宠坏了。而顺势而为,丈夫冷静下来,说:“嗯,我们很快就会再见面的。”

姑姑这样宠我,我倒是不介意。我很高兴你这么喜欢我。我曾经想过,如果可以的话,我很想做这对夫妻的女儿。但是对不起我的父母,所以我不会付诸实践,但是我太爱这两个了。

那天,吃过早饭,我坐在阳台上,凝视着花园。让我们暂时告别这风景吧……就是在我想这样的事情的时候。

————dump

我听到身后有东西掉下来。一看,只有那把有黑点的剪刀有一只螃蟹。明明叫螃蟹,却是只有我才能看见的怪物螃蟹。螃蟹正好落在我姨妈丈夫的身后,他在客厅里放松,紧挨着从他脖子后面伸出的红线。

翻倒的螃蟹旋转起来,挂在黑色剪刀上。

“哦…!”

“咦?怎么了?”。线像一团烂肉一样掉落在榻榻米垫子上。

那一刻。我无能为力我能看到它……我能看到它,但我什么也看不见……

“……对不起,没什么……”

螃蟹巧妙地用剪刀夹住线头,送到嘴里,做了一个刺耳的嘎吱声,我狼吞虎咽地吃着。

他们之间的线被切断了。我想也许很快就会长出一根绳子,把他们重新绑在一起,但绳子再也没有从他们的脖子后面长出来。不一会儿,螃蟹好像填饱了肚子似的,从我身边走过。

如果线断了,他们两个会怎么样?难不成就这样分开了吗?但是当我们离开时,他们以一贯的亲切微笑为我们送行。现在线断了,对他们两个来说都无所谓了。我相信他们会没事的,因为他们是好朋友。

然而,几个月后,妈妈通知我,姑姑和她的丈夫要离婚了。

自从线断了那一天起,两人的关系就开始恶化,夜以继日地吵架。有一天,我丈夫向我姑姑举手。我认为这就是导致他们分手的原因。

离婚后,前夫回到了父母家,姑姑还一个人住在那所房子里。每次到访,我都会像往常一样以亲切的笑容迎接我。它开始比以往任何时候都更依赖我。

从此,我讨厌螃蟹。我讨厌看它,我讨厌吃它。如果那只螃蟹没有出现,他们会一直过得很幸福。两个如此亲近的人,绝对不可能分开。

都是螃蟹的错。

…不,如果我早点注意到螃蟹,也许它可能阻止了线被切断。如果你能看到它,你也许能做到……我还是很后悔。

这就是我所知道的命运红线与断情之蟹的故事。


作者:一日一日一ヨ羊羽子
原文:◇縁切蟹◇

運命の赤い糸。

皆さんは信じているだろうか。

詳しくは知らないけど、元々は中国の縁結びの神様のお話が発祥らしく、いつか結ばれる運命にある男女は互いの足首に見えない赤い糸が結ばれているそうだ。

日本では少々形式が変わって、互いの手の小指に見えない赤い糸が結ばれている。皆さんがご存知の運命の赤い糸はこちらの方だろう。

けれど、私が知っている運命の赤い糸はそのどちらでもない。

私が初めてその現象を目撃したのは高校に入学してすぐ、これから一年間苦楽を共にするクラスメイトが一人ずつ教壇に立ち、自己紹介をしている時だった。

一人の男子生徒が自己紹介をしていると、ちょうど彼の目の前に座る女子生徒の首の後ろから、にゅるにゅると赤い糸が生えてきた。するとすぐに彼の首の後ろからも同様に糸が生えてきて、二つの糸は生き物みたいにしゅるしゅると絡み合い、やがて一本の糸になった。

まだ言葉も交わさぬ二人がそのとき恋に落ちた。所謂一目惚れ。それから間もなくして二人は付き合い始め、校内でも話題の仲良しカップルとなった。友人を介して聞いた話だと今現在も関係は良好だそうだ。

運命の赤い糸とは初めから結ばれているものだと思っていたけれど、どうやらそうではないらしい。糸が結ばれる為には何かしらの条件を必要とするみたいだ。

あくまでこれは私の推測だけれど、その条件とは「出逢い」と「想い」の二つではないだろうか。二人が出逢い、そして互いを想ってそのとき初めて糸が現れ結ばれる。運命は初めから決まっているわけではなく、自ら見つけるものだと言うことか。運命も一筋縄ではいかないようだ。

二人がこれからどうなるかは分からないけれど、私が知る限りは末永く幸せに暮らすだろう。と言うのも私の祖父と祖母はその赤い糸で結ばれていた。祖父が亡くなった時に糸は切れてしまったけれど、死が二人を分かつまで、その糸はずっと結ばれていた。

そして、悲しいことなのだけれど、私の両親は赤い糸で結ばれていない。この赤い糸は必ずしも両想いになった二人を結ぶものではない。おそらく「生涯を共にする」と言うのも一つの条件なのだろうか。

このように私の知る運命の赤い糸は少々不気味で奇抜である。

かなり希少な現象らしく、赤い糸で結ばれたカップルはほとんど見た事がない。まあ、そこらじゅう糸だらけでは見える私にとっては目障りこの上ないことだ。私が知る限りでは亡くなった祖父母と高校の同級生と、それからもう一組。母の妹である叔母夫婦がこの糸で結ばれていた。

私は幼い頃から幽霊や妖怪が見えてしまう。けれど、それが私以外には見えていないと知ってから、この事は自分だけの秘密にしている。きっと人に話せば頭のおかしい奴だと思われてしまう。それが嫌だったから…。

赤い糸の仕組みを知ったその年のお盆、私達家族は母の実家へ帰省していた。祖母が亡くなってからその家には叔母夫婦が住んでいるのだけど、私は年に数回ここへ訪れるのが楽しみであった。

その理由は大好きな叔母夫婦に逢えるからだ。

「莉柚(りゆ)ちゃんお帰りぃ。相変わらず我が姪っ子は可愛いなぁ」

叔母は私と逢うといつもこうである。私に抱きついて頬擦りし、これでもかと頭をよしよしと撫でてくれる。

叔母は表裏がなく、人懐っこくておおらかな性格は祖母にそっくりである。ちなみ母は祖父に似て頑固で無愛想だ。

子供好きな叔母は姪っ子である私を小さい頃から溺愛していた。叔母自身がなかなか子宝に恵まれず、そのせいもあってか私への溺愛ぶりは凄まじいものであった。

誕生日やクリスマスは勿論のこと、それ以外のなんでもない日でも私に色々な物を買ってくれたのだけど、その過剰な贈り物ラッシュが原因で母と叔母が一度大喧嘩をした事がある。

「甘やかすな」と言う母と、「甘やかしたい」と言う叔母の一騎打ちだ。

長いこと続いた口論の末、私へのプレゼントは誕生日の年に一回だけと言う確約を結んだのだけど、それでも叔母は母にばれないようにこっそりと贈り物をくれた。おかげで私の部屋は叔母の贈り物だらけであった。特にファンシーで可愛らしいぬいぐるみはそこかしこにあった。

友人が初めて私の部屋に訪れたときは「イメージと違う」とよく言われた。確かにぬいぐるみは趣味ではないけど、女子ならそれくらいの一つや二つ持っているものだろう。

一体私にどんな印象を持っていたのだ。

叔母の旦那さんもとても優しい人で、恥ずかしい話だけど私と逢う時は必ずお小遣いをくれた。その時も随分と可愛いイラストがプリントされたポチ袋を渡してれた。

「もう子供じゃないですから」と断ろうとするのだけど、「たまにしか逢えないんだから、これくらいはさせてよ」と、そう言って私の頭を優しく撫でてくれる。

旦那さんは若い頃に塾の講師をしていたそうで、ここへ来たときはよく勉強を見てもらったりした。高校入試のときは大変お世話になったものだ。

二人はご近所さん
でも評判の鴛鴦夫婦で、その仲の睦まじさと言ったらない。互いを気遣い、想い合う気持ちは私の両親も見習ってほしいものだ。こっそり爪の垢を煎じて飲ませてやろうか。

私はお仏壇にお線香をあげてから、縁側に腰をおろしてのんびり庭を眺めていた。ここへ来たときのもう一つの楽しみはこれだ。

私が見える事を唯一知っていた祖母と、ここで色々な話をした。私が見てきた色々な怪異の話をすると祖母は優しい表情でそれを聞いてくれた。祖母が幼い頃に見た幽霊や妖怪の話もしてくれた。それ以外のことだってたくさんたくさん話した。

ここは祖母との想い出がたくさん詰まった大事な場所なのだ。だから私はここに来るのが楽しみだった。

すると叔母がやって来て私の横にちょこんと座った。

「莉柚ちゃん、よくおばあちゃんとここでお喋りしてたよね。もしかしたら今莉柚ちゃんの隣におばあちゃん座ってるかもね」

叔母はそう言ったが私の隣に祖母は居ない。

私は見えるくせに身内の霊に逢ったことがない。

お盆と言えばご先祖様が帰ってくると言われているけど、ご先祖様の霊にも逢ったことはない。私が見る霊は大概、事件事故で亡くなったり怨み妬みを残して死んだ人がほとんどだ。

例えば輪廻転生があるとして、私のご先祖様はみんな既に生まれ変わっていて、帰ってくるご先祖様が一人も居ないのだろうか。なら、お盆とは一体なんなのか。別に私はその道の専門家なわけではないので知る由もない。

「なんてね。今日は莉柚ちゃんの好きなお刺身と天ぷらだから、楽しみにしててね」

そう言って叔母が立ち上がると赤い糸がふわっと私の顔の前を通り過ぎる。

祖父母も叔母夫婦も私が物心ついた頃から赤い糸で結ばれていた。後になって運命の赤い糸の存在を知り、それは初めから結ばれているものだと思っていた。けれど同級生が糸で結ばれる瞬間を目撃して、初めて糸の成り立ちを知ることができた。

この糸は不思議なもので絡まったところを見た事がない。一度叔母の買い物について行って糸の仕組みを知ろうとしたことがある。叔母の旦那さんは家に、叔母は車でだいぶ離れたスーパーへ行ったのだけど、糸は切れることなくどんどん伸びていく。

そしてどんな障害物を物ともせず、糸はそれらを全てすり抜けていった。見える私は触れることができるのか試してみようとしたけど、「もし私のせいで糸が切れたらどうしよう」と赤い糸には一度も触れたことはなかった。

そして気になるのはここまで伸びた糸が果たしてどうなるのか。キロ単位でびよーんと伸びてる筈だから、ここから家まで戻ったら鞄の中に入れたイヤホンのコードよりもひどい絡み方をするであろう。

けれど何故かそうならない。家に帰ると糸は巻尺のように程よい長さに戻っているのだ。妖と同様、この糸も得体が知れない。私が赤い糸に関して分かっているのは結ばれる仕組み(あくまで私の推測)とそれから糸が切れる瞬間、それだけだ。

…いや、それだけじゃない。

もう一つ、この糸に関して私が知っていることがある。

「莉柚ちゃん今日で帰っちゃうのかぁ…、夏休み終わるまでいればいいのに…、ていうかもうウチの子になっちゃえばいいのに…」

叔母は私と別れるときはいつもこうである。私に抱きついて頬擦りし、これでもかと甘えてくる。そして旦那さんが「まあまあ、またすぐに逢えるんだから」と宥めるのが一連の流れだ。

私はこうして叔母が甘えてくるのが嫌ではなかった。私の事をこんなに好きでいてくれるのが嬉しかった。できるものなら本当にこの夫婦の娘になっていいと思ったこともある。でも、それは両親に申し訳ないので実行に移すことはないけど、それくらい私はこの二人が大好きなのだ。

その日、朝食を済ませた私はまた縁側でぼーっと庭を眺めていた。またしばらくこの景色ともお別れか…。そんな事を思っているときだった。

———ぼとっ

後ろで何かが落ちる音がした。見るとそこには鋏だけが黒い斑模様の蟹が居た。蟹と言ってもそれは私にしか見えていない妖の蟹。蟹が落ちたのはちょうど居間で寛ぐ叔母の旦那さんの真後ろで、首の後ろから伸びる赤い糸のすぐそばだった。

ひっくり返った蟹はくるんと起き上がると黒い鋏に糸を引っ掛けてそのまま…。

「あっ…!」

「ん?どうかした?」

きょとんと私を見る旦那さんの首から垂れる糸が黒く染まっていく。糸はまるで腐った肉塊みたいにぼとぼと畳の上に落ちていった。

一瞬のことだった。私は何もできなかった。見えているのに…、見えてるくせに何も…。

「…ごめんなさい、何でもないです…」

蟹は器用に鋏で糸の成れの果てを掴むとそれ口へ持っていき、くちゃくちゃと耳障りな音を立てながら貪り喰っていた。

二人の糸が切れてしまった。もしかしたらすぐ糸が生えてきてまた結ばれるんじゃないかと思ったけど、二人の首の後ろから糸が生えてくることは二度となかった。しばらくして蟹は腹が満たされたのか、我が物顔で私の前を通り過ぎると庭に出て、そのままどこかへ行ってしまった。

糸が切れた二人はどうなってしまうのか。もしかしてこのまま別れたりするのだろうか。でも私達が帰るとき、二人はいつもと変わらない優しい笑顔で見送ってくれた。今更糸が切れたからって二人には関係ない。あんなに仲の良い二人なんだからきっと大丈夫だ。

けれど、それから数ヶ月が経った頃、母から叔母夫婦が離婚すると知らせを受けた。

糸が切れたあの日から、今までが嘘のように二人の仲は険悪になって毎晩口論が絶えなかったらしい。そしてあるとき、旦那さんが叔母に手をあげてしまった。それが別れるきっかけになったそうだ。

離婚後、元旦那さんは自分の実家へ帰り、叔母はあの家に今も一人で住んでいる。時々訪れるといつもと変わらない優しい笑顔で出迎えてくれる。そしていつにも増して私にべったりくっつくようになった。

あれ以来、私は蟹が大嫌いだ。見るのも嫌だし食べるのも嫌になった。あの蟹が現れなければ、今も二人は幸せに暮らしていた筈だ。あんなに仲の良かった二人が別れるなんて絶対にありえない。

全てはあの蟹のせい。

…いや、もっと私が早く蟹に気づいていれば、もしかしたら糸が切られるのを防げたかもしれない。見えているならそれができたかもしれないのに…。それが今でも悔やまれる。

これが私の知る運命の赤い糸と、縁を切る蟹の話だ。

日本恐怖故事

◇ 写作 ◇

2024-1-22 0:00:02

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◇被附身的理由◇

2024-1-22 9:00:01

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