“一本邀请她的小说”

iamk 日本恐怖故事 2023-12-21 18:00:01 154 0

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‖这是某个女人的故事。假设H先生[文]

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‖H先生坐火车上下班,经常看书。[章]那天我也在看一本从我家附近的二手[来]书店买来的小说,好像是外行写的。[自]

‖全书纯白,未写书名和作者姓名。[i]因此,30日元是和糖果一样划算的[a]价格。我买它的原因之一是它便宜而[m]且状况良好,但还有另一个很有趣的[k]地方。

‖在小说人物设定里。

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‖H先生在随便路过的一家二手书店[.]找到了这本纯白的书。feel。

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(这个主角和我背景一样)

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‖很多先生,因此,很感兴趣,并支[c]付了三十日元。

看完无题小说,我更加惊讶了。哪怕[n]是在车内,也足以泄露出一个声音来[恐]

(这不是我)

‖是的,所有发生在主角身上的事件[怖]都和我一样H先生,就是这样。

(咦,这个)

〉H先生一头雾水,右手捂住嘴巴。[鬼] .然后他使劲合上了书。

――描述是去二手书店买这本书。

什么意思? H先生努力整理思绪,想着一些小事[故],却一无所获。

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‖怕遇上神秘的书,一大早就开始郁[事]闷了。 H先生试图忘记他的工作,说他应该[文]忘记它。

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‖*

‖晚上 5 点。 H先生按时在考勤卡上盖章后准备回[章]家。就这样,我没有告诉任何人,“[来]谢谢你的辛勤工作”就离开了公司。[自]

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‖火车上没有座位。我一脸愤恨地看[i]着坐着的人,懒洋洋地抓住栏杆,任[a]其过去。

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(说到那个,那本书)

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∀我又想起了我刚要看的奇葩小说早[m]晨。当我从包里拿出一本书时,我会[k]从中间开始读。好奇心似乎战胜了恐[.]惧。

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‖买了这本书后,故事比我预想的要[c]短,还顺利的结束了。

然后,H先生读了一点书,意识到发[n]生在他认为是他自己的主角身上的事[恐]情会在未来发生。

(So...)

∀H先生额头冷汗直冒。

(如果小说里写的是真的……三天后的早上,我坐的火车出轨,我就丢了性命)< /p>

‖H先生身体一僵,差点晕过去。

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(没办法...)

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∀那之后什么都不写了。这是一张白[怖]纸。

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‖到目前为止,画出来的一切都是一[鬼]致的,所以H似乎忍不住相信这就像[故]是对未来的预言。然而,也是他的另[事]一面,认为这种不切实际的事情是绝[文]对不会发生的,认为这只是巧合。

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‖但是心里很不安,不知道该怎么办[章]。 H先生继续盯着空白的页面,脸色阴[来]沉。

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‍‍‍‍‍*

‍三天后。这一天终于来了。

‖H先生身体不舒服,不太想上班。[自]

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(怎么办,我不想上班)

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∀我完全迷失在那本小说中似乎是我[i]只好打电话给公司,让他们知道我正[a]在休息,我知道我会失去他们的信任[m]。因为我身体不舒服。

〉当然是假的。如果我不这样做,我[k]就不能离开公司。这是一个绝望的措[.]施。

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‖然而,平日匆匆忙忙的可以好好休[c]息一下而开心的H先生,又钻进被子[n]里睡着了。

‖H先生在午后醒来,很自然地打开[恐]了电视。然而,所有频道都在做无聊[怖]的信息节目。

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‖但是,因为一切都一样,播放着同[鬼]样的视频和内容,所以有一种不协调[故]的感觉。

──他们是受损的火车和“许多受害[事]者”以及红色粗体的字幕。

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(呵呵,也许)

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‖是的,H先生本该搭乘的火车出轨[文]了。曾是。

‖事实证明,小说中的事件是真实的[章],现实也在相应地发展。

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“一本邀请她的小说” 日本恐怖故事

(No lie, no lie)

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∀H君不敢相信,看节目目瞪口呆并[来]站着不动。

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(那本小说!)

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‖急忙从包里拿出小说,完成了,我[自]打开了我周围的页面。

――奇怪。

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‖如果是以前,会以“主角出轨而死[i]”这样的字眼结尾。避免线路事故。[a]”然后,这句话继续说下去,在空白[m]的地方补上了新的故事。

‖H先生恐惧地读着新的课文。上面[k]写着:

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“她逃跑三天后,半夜在家中被一名[.]男子刺死住在同一间公寓里。然而,[c]一拖再拖,我不知道这是否会成为现[n]实,一种恐惧的感觉慢慢涌上心头。[恐]

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(怎么办!我都不知道了。。。)

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∀迷茫到这个地步疯了,我把头发弄[怖]得一团糟,最后哭了起来。我该怎么[鬼]办,我该怎么办,一边嘴里念念有词[故],一边念念有词……

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‹ 过了一会儿,我终于开始冷静下来,所以我觉得我必须做点什么。

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(是的,报警)

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尽快你这么想,马上报警。

“是啊,怎么了?”看起来像个男人[事]

“他们居然要杀我。”

“对了,什么情况?”可你解释一下[文]为什么?”

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“同一公寓的男人三天后会杀了我![章]

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“三天后?『你是说发了恐吓信吗?[来]

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他是这么说的。”

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‖上到那时候,人流还算热闹,但是[自]H先生话音一落,隔壁的叹息声就清[i]晰的听到了。

你知道,你能不能别开玩笑了?什么[a]? “一个预言?” “这样的事情,一件一件去处理,人[m]手可就少了!” “有什么事,请联系我!”

“不,但是”

――呸呸呸。

‖男警官单方面挂断了电话。

‖H先生认为没有人会相信预言。后[k]悔自己变得有点冲动了。我应该在打[.]电话之前更仔细地考虑一下。

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(没办法,三天后了,还是给点时间[c]想想吧。)

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∀H 这么想着,他发现自己饿了,就穿着睡衣往便利店走去。

‍‍‍‍‍*

‍三天后。今天是休息日,但H先生[n]记得那是怎样的一天。

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(半夜有人来,我要把门锁紧)

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决定后,H 先生喜欢看电视和 DVD,试图掩饰他的恐惧。

‖时间过得飞快,已是今晚午夜。

(不知现在是半夜几点)

然后,我仔细检查了大门和窗户的锁[恐]

‖两小时后。

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‖已经开始犯困的H先生正在与困倦[怖]作斗争。这是因为如果你被告知如果[鬼]你睡着了,你会在此期间筋疲力尽,[故]那就没有尽头了。

‖于是,前门传来敲门声。紧张突然[事]发生。

‖我沉默了一会儿,但敲门声还在继[文]续木板。我没办法,就隔着门应了声[章]“是”。

“我和你住一个公寓,能和你说句话[来]吗?”男人回答道。

“是……”

∀先生会被杀的

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你能帮我开门吗?

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不行,请在那儿说话。

< p>

“这样……明白了吗?”

∀过了一会儿,门把手开始响起从前[自]面摸索。

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(咦,你干什么)

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∀急忙透过猫眼看那人,好像他试图[i]通过在钥匙孔中插入一些东西来打开[a]门。

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“喂,你干什么!我这就报警!”

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可是什么样的一个甚至不露面的男人[m]

∀然后,咔嗒一声,锁打开了。

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但是门不能完全打开,因为它有锁链[k]。只创建了一个小间隙。

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──男人的眼珠子偷看我。

摇一摇

“摇一摇”

∀太毛骨悚然了,H先生向后倒了.[.]

‹ 与此同时,男子拿出一把结实的钳子[c],一下子就把铁链剪断了。最坏的发[n]展。门已经打开了。

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‖男人的全身出现,带着诡异的笑容[恐]。他右手拿着钳子。

“我到底是什么你说什么!

‖H老师只能喊,跑也跑不了。

“我一直觉得你很可爱,我们一起做点好事吧。”

∀呵呵呵呵,男子带着疑惑的笑声慢[怖]慢靠近 H 先生。

‖H先生急忙在厨房里四处寻找可以[鬼]反击的东西,拿起一把菜刀。

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“别过来!再靠近我就捅你!”

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>‖对方似乎没有退缩的样子,还在靠近。

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(如果发生这种情况,我别无选择,[故]只能这样做)

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〉 H尖叫着,将刀对准了那个人。

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――血之泉。 H先生全身沐浴在如雨点般流动的血[事]液中。

‖男子的脖子被砍断。

“怎么回事!注意看!都怪你。”

〉在那里,向那个男人吐脏话。

‖男子面朝下躺在地上,已经奄奄一[文]息。不一会儿,H先生也晕倒在地。[章]

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‍‍‍‍‍*

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‍监狱。

‖是时候换主管了。

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“干得好。有什么问题吗?”晚班的人说。

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“还是很吵,”早班的男人说。

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“哦,那个家伙。这就是精神病患者[来]感到疲倦的原因。”

“是的,当然。”晚班的男人微微一[自]笑。

“好了,剩下的就交给你了”

“啊,辛苦你了”

第一班的人离开了这个地方。出于好[i]奇,晚班的男人去了传闻中人的监狱[a]

‖随着我们越来越近,隐约可以听到[m]尖叫声,而且声音逐渐变大。

“还给我!还给!”

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‖面色难看的瞪着男人.明明只隔着[k]一点缝隙,他们却拼命伸着胳膊,寻[.]找着什么。

‖她就是那个传闻中的女人。

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“你想要什么回报?”男人缓缓的问女人。

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“这是一本空白的书,一本小说。它对我很重要。所以把它还给我。”

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>“你知道的,我说过很多次了,但我没有那本书,我找过,但它不在你身边。”

“不,不。哟!你在骗我!你把它藏在某个地方了!”

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“这就是为什么......”

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“还!还!”

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‖我背对着那个女人,开始往前走,[c]但是那个女人还在对那个男人大喊大[n]叫。

“还给我!”

‖男子进入办公室,拿起犯人名单。[恐]然后,我找到了一份包含那个女人详[怖]细信息的文件并浏览了它。

――罪名是谋杀。她闯入与她同住一[鬼]个公寓的男子的房间,用菜刀将他刺[故]死。动力预示未来他表示自己是按照[事]自己写的小说演的,后来才知道根本[文]没有这本书。作为精神评估的结果,[章]它被诊断为异常。我想是因为她的妄[来]想膨胀了。

‖经过追查,原来从她口中说出的一切都是妄想的谎言。

‖我长大和工作的公司是虚构的。最让我感兴趣的是这部预言小说。她说预言救了她免于火车出轨,但实际上并没有发生这样的事故。据推测,一切都是她妄想造成的虚幻,而这一切的象征就是她所谓的“纯白小说”。

‖多年没有家人和朋友,她变得孤独。她似乎至少有一些同情。

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看完一切,男人点燃了一根烟。

‹ 吐出来的时候,他又挠了挠头,一脸[自]为难。

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(那个女人能看到什么?)

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〉男人这么想,我把烟拧进了烟灰缸[i]又回去巡监。

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作者:細井ゲゲ
原文:『彼女を誘う小説』

 

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 ある女性の話だ。仮にH氏としよう。

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 H氏は電車での通勤であり、よく読書をしていた。その日も自宅近くにある古本屋で買った素人が作ったと思われる小説を読んでいた。

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 本全体は真っ白で題名、作家名は特に記されていなく、古本にしては綺麗に整っている。それにしては三十円と駄菓子同然の格安な値段。その安さと小奇麗な状態で買ったのも理由の一つなのだが、もう一つ大きなそそられる点があった。

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 それは、小説の登場人物の設定にあった。

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 何気なくよった古本屋でH氏はその真っ白な本を見つけると、ぱらぱらっと軽く冒頭から少し流すように読んでみると、少しの驚きを感じる。

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(この主人公、私と生い立ちが同じだわ)

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 偶然かH氏と被る点が多く、そういった理由から興味がそそられ、三十円を払うに至ったのだ。

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 その無題の小説を読み進めると、更に驚いた。車内なのにも関わらず、「えっ」と声を漏らす程だ。

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(これ、私じゃないの)

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 そう、主人公に起こる事象が全てH氏と同じなのだ。

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(え、これって)

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 右手を口に被せ、H氏は困惑している。そして、勢いよく本を閉じた。

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 ――古本屋に行ってこの本を買った描写が書かれている。

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 え、どういうこと。H氏は考えを収拾させようと、温和な出来事を考えてみたが、何も見当たらない。

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 不可思議な本の出合いに恐怖を感じ、朝っぱらから暗鬱としてしまう。H氏はなかったことにしよう、と仕事に向け忘れるように心掛けた。

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     *

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 夕方五時。定時でしっかりとタイムカードに打刻してから帰る支度をするH氏。そのまま、「お疲れ様でした」と誰に言うともなく、会社を後にした。

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 電車、席は空いていない。座っている人たちを恨めしそうに眺めると、手すりにだるそうに掴まり、ただぼーっとしてやり過ごす。

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(そういえば、あの本)

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 朝読みかけた奇妙な小説のことを思い出した。鞄から本を取り出すと、途中から読み始める。恐怖心よりも好奇心が上回っているようだ。

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 この本を買ってからの先の話は、思ったよりも短い文章だけであり、すんなりと完結してしまった。

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 そうして、自分と思われる主人公に起きる事柄はこれから未来に起こることなのだ、とH氏は少し読んだ挙句に気付いた。

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(ということは……)

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 額からは冷や汗を掻いているH氏。

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(もし、この小説に書いてあることが事実ならば……、三日後の朝、私が乗る列車は脱線事故を起こすことになり、私は命を落とす)

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 H氏は硬直してしまい、気が遠くなってしまいそうになる。

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(まさかね……)

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 それから以降の内容は一切書かれていない。白紙なのだ。

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 これまで、描かれていることは全て一致していることから、その未来の予言みたいなことを信じられずにいられない様子のH氏であるが、馬鹿馬鹿しい、たまたまよ、とそんな非現実的な事が起こる筈がない、と思っている一面もあった。

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 だが気持ちは落ち着かず、しかもどうすればよいのかわからない。H氏は暗い表情で、真っ白なページを睨み続けていた。

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     *

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 三日後。とうとうその日がやってきた。

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 H氏は気分が悪く、とてもじゃないが会社に行く気になれないでいる。

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(どうしよう、会社に行きたくないわ)

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 完全にあの小説に参ってしまっているようだ。仕方なく、信頼を失うのを覚悟の上で、会社に休む旨を電話で知らせた。体調が優れないので、と。

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 もちろん仮病だ。こうでもしなくては、会社を休めない。苦肉の策である。

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 しかし、平日に急遽休めたので、まだ心置きなく寝られることに幸せと思うH氏は再び布団に潜り込み、寝てしまった。

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 昼過ぎに目を覚ましたH氏は、自然の流れでテレビをつけた。しかし、どのチャンネルも退屈な情報番組しかやっていない。

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 だが、全てがそうであり、同じ映像と内容が放映されていることから、違和感を抱く。

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 ――それらは、破損している列車と「多くの犠牲者」と赤く太い字体のテロップ。

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(え、もしかして)

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 そう、H氏が乗る筈だった列車が脱線事故にあったのだ。

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 小説の出来事が的中し、その通りに現実も進行している、ということが立証されてしまったのだ。

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(うそ、うそよ)

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 H氏は信じられず、呆然と番組を見て、立ち尽くしている。

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(あの小説!)

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 慌てて鞄の中から例の小説を取り出すと、完結した辺りのページを開いた。

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 ――変わっている。

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 以前までは「脱線事故に遭い、主人公は死んでしまう」と書かれて終わっていたのだが、「脱線事故を免れ」と書き換えられている。そして、更に文章が続いており、白紙だったところには新たな話が足されているのだ。

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 恐る恐るH氏は新たな文章を読んでみる。そこにはこう書かれていた。

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「命を免れた三日後、同じアパートに住む男に夜中自宅で刃物に刺されて殺される」

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 また死ぬのか、と恐怖を感じるよりかは先ず項垂れるH氏。だが遅れて、これが現実になるのか、と思い、じわじわと恐怖心が湧いてくる。

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(私はどうすればいいの! もうわからない……)

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 発狂しそうになるくらいに混乱してしまい、自分の髪をぐしゃぐしゃ、と掻き毟り、仕舞いには泣いてしまった。どうしよう、どうしよう、と何度も呟きながら……。

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 ややあってからようやく落ち着き始めたので、とにかく何かしなくては、と思い考えを巡らす。

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(そうだ、警察に相談してみよう)

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 そう思うや否や、すぐさま警察に問い合わせる。

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「はい、どうされましたか?」と軽快な声で警察官が発した。男性のようだ。

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「実は命を狙われているのですが」

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「はい、それはどういった事情なのか説明願いますか?」

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「同じアパートの男性に三日後殺されるんです!」

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「三日後? 何か脅迫文みたいな手紙を送りつけられた、ということですか?」

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「いや、そうではなくて、予言でそう言われたんです」

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 そこまで、威勢のいい声とテキパキとした流れだったが、H氏がそう言った途端に向こう側から溜息がはっきりと聞こえた。

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「あのね、ふざけるのもいい加減にしてもらえませんかね。何? 予言ですか? そんなものにいちいち付き合っていたら人手が足らなくて仕方ないですよ! もし何か遭ったら連絡してください!」

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「いや、でも」

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 ――プー、プー。

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 警察官の男性は一方的に電話を切ってしまった。

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 確かに予言なんて誰も信じてくれる筈がない、とH氏は思った。少し衝動的になってしまったことを悔やむ。もっと慎重に練ってから電話するべきであった、と。

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(仕方ないわ。三日後なんだから、少し余裕を持って考えましょう)

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 H氏はそう思うと、腹が減っていることに気付き、寝巻きのままコンビニに向った。

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     *

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 三日後。今日は休みだったが、しっかりと今日がどんな日であるかH氏は覚えていた。

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(夜中に男が来るんだわ。しっかり戸締りしなくては)

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 そう心に決め、H氏はとにかくテレビやDVDを見てその恐怖心を誤魔化すように楽しんだ。

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 あっという間に時間が経ち、只今夜中の十二時。

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(夜中って何時かしら)

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 今更そう思うH氏は不安を募らせた。そして、玄関の戸、窓の鍵を入念に何度も戸締りを確認する。

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 それから二時間後。

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 眠くなっていたH氏は睡魔と闘っていた。寝てしまってはその間にグサリ、とされては一溜まりもないからである。

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 すると、「コンコン」

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と玄関からノックされる音が聞こえる。急に緊張が走る。

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 しばらく黙っていたが、何度もノックは続いた。仕方ないので、「はい」と扉越しから返事をする。

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「同じアパートに住んでいる者なのですが、少しお話いいですかね」と男が答えた。

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「は、はい……」

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 H氏は小説に書かれていた「刃物に刺されて殺される」というのを思い出す。

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「良ければドア開けてもらえませんか?」

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「いや、そこで話してください」

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「そうですか……わかりました」

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 すると、ややあってから扉の取っ手部分からガサゴソ、と表から弄る音が聞こえ始めた。

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(え、何してるの)

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 慌てて覗き穴から男の様子を見ると、どうやら鍵穴に何か差し込んで扉を開けようとしているみたいだった。

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「ちょ、ちょっと何してるんですか! 警察呼びますよ!」

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 しかし何の反応も示さない男。

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 そうして、カチャ、と鍵が開く。

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 だが、チェーンをしている為完全に扉は開かない。僅かな隙間が出来たのみである。

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 ――ぬっとその男の目玉がこちらを覗く。

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shake

「きゃあっ」

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 余りにも気味が悪く、H氏は後ろに転んでしまった。

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 その間に男は頑丈そうなペンチを取り出すと、チェーンを一回で切り外してしまった。最悪な展開。扉は開いてしまったのである。

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 全身が現れた男は不気味な笑みを浮かべていた。右手にはペンチが握られたまま。

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「何よ、私が何したって言うのよ!」

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 H氏はそう叫ぶのが精一杯であり、腰が抜けて逃げることが出来ない。

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「前々からかわいいなって思ってたんだよねー。ちょっと俺と良いことしようよ」

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 ウヘヘヘ、と怪しい笑い声と共に男はH氏に向ってっゆっくり近づいてくる。

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 H氏は慌てて台所辺りから何か対抗出来る物を探し、包丁を手に取った。

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「こないで! 近づいたら刺すわよ!」

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 相手の男は怯む様子はなく、依然に近づいていた。

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(もうこうなったら、やるしかない)

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 そう思うと、H氏は絶叫しながら包丁を男に向って突き立てた。

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 ――血の噴水。シャワーのように流れる血液を全身で浴びるH氏。

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 男の首を掻っ切ったのだ。

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「どうだ! ざまあみろ! お前が悪いんだからな」

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 極度の興奮状態になっているH氏は汚い言葉を男に吐き捨てた。

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 男は完全に瀕死状態で、うつ伏せに倒れている。ややあってからH氏も気絶してしまい、その場に倒れこんでしまった。

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     *

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 刑務所。

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 監視官の交代の時間である。

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「よ、お疲れ。何か変わったことあったか?」と代わりにきた遅番の男が言った。

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「相変わらずうるさいよ」と早番の男が言った。

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「あー、あいつな。精神異常者はだから疲れるんだよな」

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「ああ、間違いない。だけど、それにも慣れちまったのも怖いよな」

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「確かに」と遅番の男が少しにやつく。

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「まあ、後は頼んだよ」

「ああ、お疲れ様」

 早番の男はその場を去った。遅番の男は興味本位で噂になった人物の牢獄へと向った。

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 近づくにつれて、叫び声が微かに聞こえ始め、次第に声は大きくなっていく。

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「返せー! 返せー!」

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 物凄い形相で男を睨んでいる。僅かな隙間しかないのにも関わらず、その間から精一杯腕を伸ばし、何かを求めている。

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 噂になっていた女だ。

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「何を返して欲しいんだい?」と男はゆっくりとその女に問いかけた。

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「真っ白な本で小説なの。私の大事なものなの。だから、返してよ」

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「あのね。何度も言ってるけど、そんな本なんてなかったよ。ちゃんと探したけど、あなたの周りにはなかったんだって」

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「うそ、うそよ! 私を騙しているんだわ! 何処かに隠したんでしょ!」

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「だからねー……」

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「返せー! 返せー!」

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「こりゃ駄目だ」と男は呟くと、困った顔で頭を掻いた。

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 女に背を向けて歩き始めたが、依然にも女は男に向って叫び続けていた。

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「返せー!」と。

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 男は事務室に入ると、収容者の名簿を手に取った。そして、あの女の詳細が載っている書類を見つけ、目を通した。

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 ――罪名は殺人。彼女と同じアパー[a]トの住民である男性の部屋に乗り込[m]み、包丁で刺殺。動機は未来を予言[k]する小説にのっとり実行したと供述[.]していたが、そのような本はないこ[c]とが後にわかる。精神鑑定の結果、[n]異常あり、と診断される。彼女の妄[恐]想が肥大化してしまったのが原因と[怖]思われる。

 更に取り調べをした結果、彼女の口[鬼]から発されることは全て妄想から出[故]来た虚言であることがわかった。

 生い立ち、勤めていた会社は実在し[事]ない架空なものだった。そして、最[文]も興味を引かれたのが、その予言の[章]小説だ。彼女はその予言のお陰で列[来]車の脱線事故に遭わずに済んだ、と[自]言っていたが、そのような事故は実[i]際に起きていない。全てが彼女の妄[a]想が作り出した非現実であり、その[m]象徴として生まれたのが、彼女が口[k]々に言う「真っ白な小説」なのだと[.]推測する。

 何年も家に引き篭もり、家族や友人のいない彼女は孤独となり、そういった経緯から妄想の世界を作り、そこに入り浸ってしまったと思われる。少なからず彼女には同情の余地はありそうだ。

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 全て読み終えると、男は煙草に火をつけた。

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 ふうーっと吐き出すと、また困ったような表情を浮かべ頭を掻いた。

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(あの女には何が見えているのだろうか)

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 男はそう思うと、煙草を灰皿にねじ込み、再び牢屋の見回りへと戻っていった。

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