作者:いかるど
原文:@〇〇
「高かったのに…壊れた?」
サイクリングが趣味の私は、先月買[文]ったばかりの6万円のナビに苛立ち[章]を感じていました。
うっかり山奥まで入ってしまい、道[来]に迷っていました。
その時のために買ったナビですが、[自]示す方向に走っても山を抜けること[i]が無かったのです。
その上、山奥なのか電波は途切れ途[a]切れの状況です。
勿論スマホなんてずっと圏外を指し[m]ていました。
時間は14時過ぎで、暗くもないの[k]であまり焦ってはいませんでした。[.]
とは言ったものの、12時から2時[c]間ほどナビに従って走っていました[n]。
8時頃食パン一枚食べて以来何も口[恐]にしていないものでしたから、空腹[怖]、そして知らない場所、と苛立ちは[鬼]増していきます。
「電波の繋がるところまで行こう」[故]
少しでも麓に戻ろうという意識でい[事]っぱいの私には、電波のアンテナ唯[文]一の頼りでした。
10分ほど走っていると、電波のア[章]ンテナが1つだけ標示されました。[来]
それと同時に「〇〇市10km」と[自]いう標識が目に入ったのです。
私はアンテナが1つでも安定する場[i]所を探しました。
なぜなら〇〇市という地名を聞いた[a]ことも見たことも無かったのです。[m]
先程からずっと標識には〇〇市とだ[k]け標示されていることに加え、地元[.]からそこまで離れた場所に来たつも[c]りは無かったので、焦り、より背筋[n]が震えるような恐怖を覚えました。[恐]
「〇〇市、〇〇市………」
何度も検索をかけていますが、やは[怖]り出てくるのは似た地名のみ。
それはナビも同様でした。
「あ、電話!!」
アンテナはかなり不安定でしたが、[鬼]希望を持って自宅へ電話を掛けまし[故]た。
結果は予想通りでしょうか?
出ないのではなく掛かりすらしませ[事]ん。
仕方なく、もう1度検索をかけまし[文]た。
「〇〇市って…………………」
驚きのあまり声すら出なく、本当に[章]こんな反応だったと思います。
〇〇市というのは自宅から200k[来]m程離れた場所にある山でした。
ロードバイクとはいえ、私程度の速[自]度じゃ3.4時間あったとしてもと[i]ても辿り着ける距離じゃないでしょ[a]う。
更に調べようとスマホのページを下[m]にスクロールしたとき、自宅から電[k]話がかかってきました。
「もしもし…?」
着信音には口から心臓が出そうなほ[.]ど驚きましたが、自宅の電話番号だ[c]と確認したときはとても安心しまし[n]た。
「お父さん?お母さん?お姉ちゃん[恐]?」
電話の相手は何も答えません。
画面を確認しても、通話は切れてお[怖]らず安心が一気に不安に変わります[鬼]。
「とりあえず用件を伝えるけど、道[故]に迷って困っているの。〇〇市って[事]言うところを調べてほしい」
「いま、から」
「そう、とにかく今から。
場所が分かったら車で迎えに来てく[文]れないかな。今からならこっちには[章]夜までには着くでしょ?」
「いま、からいくね」
「もう分かったの?!とりあえずお[来]願い!
それと…」
言おうと思った時には遅く、通話は[自]切れていました。
切らないでほしかったな、と心の中[i]で文句を言いました。
私は重要なことに気づきました。
それを気づいた時、心臓がドクドク[a]と脈打っているのが聞こえるくらい[m]です。
あの声、誰だ?
私の家族にあんな幼い声はいません[k]。
逃げなくては。震える脚、震える手[.]、乱れる呼吸、全ての気持ちを抑え[c]て自転車にまたがります。
スマホもナビも圏外。
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逃げる、という気持ちだけを抱えた[n]私が着いた先は、川を挟んだ小さな[恐]集落のような場所でした。
人っ子一人見えないものの、干して[怖]いる洗濯物は新しく疑うことなくす[鬼]ぐさま逃げ込みました。
ここなら何かを知っているはずだ、[故]そう思って。
「すみませんー……
誰かいませんかーーー……」
私の声は遠くへと響き、村全体へ聞[事]こえているだろうと思うほどでした[文]。
川沿いに奥まで歩いていくと、大き[章]なお寺が出てきました。
まるで何100年も手入れされてい[来]ないようです。
お賽銭箱の前に立ち、持ち物を確認[自]しました。
緊急用500円玉、水、タオル、お[i]守り、スマホ。投げ込めるものは5[a]00円玉。そして私は助けてくださ[m]い、と願いました。
もう1度頭を下げ、私は社殿の上が[k]り口の階段に腰を掛けました。
辺りは薄暗くなり始め、時計は16[.]時を回っていました。
何一つ解決策が見つかっておらず疲[c]れきっていた私は知らぬ間に眠って[n]しまっていたようです。
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目が覚めると私は車の中にいました[恐]。
「お父さん!!!」
「なんだ」
「よく場所がわかったね!ありがと[怖]うありがとう」
本当に感謝の言葉以外出てきません[鬼]。
私は助かったんだ、と思いました。[故]
「帰るぞ、俺らの場所に」
「ありがとう…そうだね」
時計は21時を指しています。
長い時間眠っていたみたいでした。[事]
心が落ち着き、この状況に不信感を抱き始めていました。
何かが、全てが、おかしいのです。[文]
「お父さん、なんでここが分かった[章]の?」
お父さんは前を向いたまま。
「どこに向かっているの?」
やはりなにも答えません。
「降りたい」
降りなければ死ぬ。
車のスピードは増すばかり。
ドアのロックを外し、私は外に身を[来]投げ出しました。
しかし、地面に叩きつけられること[自]はない。
最後に見たのは、着物を着た男、女[i]、子供、老人……、全てが高笑いし[a]ている。
ここは、ダムだ。
私はダムに身を投げてしまっていた[m]。
そうか、〇〇市とは……………。
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私は3年間ほど行方不明として扱わ[k]れていたみたいでした。
私が発見され、記憶が戻ったのはい[.]つもサイクリングに行く山の麓。私[c]が迷い込んだ山とはかけ離れていま[n]した。
濡れて倒れている私をお父さんが見[恐]つけてくれたようです。
手には500円玉を握りしめていま[怖]した。
あのときの願いを神様が聞いてくれ[鬼]たのでしょうか。
それ以外にも、私のポケットからは[故]焼かれたようなお守りが出てきまし[事]た。
あとから分かったことですが、〇〇[文]市とはダム建設のために埋められた[章]土地だったようです。
村人は立ち退かなかったために、国[来]のお偉いさんがそのまま埋め立てた[自]とか…。
今は地図にも、ナビにもそんな村は[i]ありません。
家の前に捨てるつもりで置いてあっ[a]た私の自転車とナビが消えた数日後[m]、お隣さんが行方不明として捜査さ[k]れています。
呪いに巻き込まれた、それしか考え[.]ることが出来ません。
お隣さんの身内が毎日私を訪ねてき[c]ますが、知らないの一点張りです。[n]
だって、もうあんなことに巻き込まれたくないですもんね。
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