早晚的凉风吹过,炎热的夏天终于开始感觉即将结束。
那天,我工作很忙,周六周日,由于[文]工作停顿,公司强制我补休。
不过,我是单身,没有女朋友,如果[章]工作日突然休息一天,我也不会太高[来]兴。
不过,由于工作日休息,我决定开车[自]去房总半岛兜风。
赶上早上的交通结束,我离开家,从[i]首都高速公路乘坐Aqua Line,进入千叶县,然后直接穿[a]过房总半岛到达外房。
天气晴朗,久违地感受着海风,看着[m]大海,品尝着海鲜盖饭,悠闲地游览[k]了千叶附属的小水族馆大学,我一直[.]想去的地方,没什么可做的。Ta。[c]
现在,我想做什么,但太阳已经落山[n]了,虽然我觉得时间还早,但我还是[恐]决定回家避开高峰时间。
我经常在开车时听调频广播。
我最喜欢的歌曲也会下载到导航系统[怖],但除非有特殊原因,否则我会听调[鬼]频广播,因为它为我提供了新鲜的主[故]题和歌曲。
然后,大概是当地的FM电台,正在[事]谈论与千叶县有关的怪物。
基本上,我不讨厌这样的鬼故事。
以有趣的方式介绍了“手贺沼小藏”[文]、“黑龙洞”、“树海”等各种怪物[章]。
哇,竟然有这样的怪物!
嗯,也许这也是千叶?
当我听到这个的时候,有一个叫做“[来]Tsun”的怪物介绍了“津大人”[自]。
唯一似乎清楚的是,那是傍晚出现的[i]黑烟般的怪物,但具体细节却不太了[a]解。
似乎会出现在南房总市一个叫Mas[m]uma的地方,但我看导航系统,距[k]离这里并没有那么远。
我决定冒险一试,看看这个地方是什[.]么样子,所以我将名为 Adden 的地方添加到了导航目的地中。
************
马苏马大坝位于一条狭窄道路的尽头[c],汽车几乎无法通过……,我把车停[n]在湖边。
大坝里的水是虽然浑浊,称不上美丽[恐]的水边风景,但却是一片宁静的风景[怖],没有妖怪出现的气氛。
我看了看智能手机上的地图,想看看[鬼]附近有没有什么东西,但除了大坝下[故]面有一个水处理厂之外,似乎没有什[事]么特别的东西。
我操纵屏幕进一步放大地图。
“嗯,在这样的地方有一座神社。”[文]
地图显示日枝神社位于净水厂附近的[章]山上。
大概是当地的守护神吧,我觉得也不[来]是很宏伟的神社,不过既然都走到这[自]一步了,我想打个招呼就回家吧,于[i]是我就转身了车子绕了一圈,驶向大[a]坝下面。我下了山。
距离通常的日落时间还有一段时间,[m]但这片山谷地区已经天黑了。
我沿着一条没有护栏的狭窄乡间小路[k]行驶,当我到达一个似乎靠近神社的[.]地方时,我在路边找到了一个可以停[c]车的地方,并下了车。
“嗯,是这样的。”
当我下了车,穿过树林走上缓坡时,[n]我发现旁边有一个非常古老的石龛。[恐]正在建设。
虽然是一座小神社,高约一米,但看[怖]起来已经存在很久了。
这个曾经被称为阿波之国的地区有着[鬼]惊人的悠久历史,自古以来一定有许[故]多不同的人居住在这些山上。
也许至少有一个村庄已经沉入马苏马[事]大坝的底部。
从神社往前走,就看到了正殿。
它矗立在一座金碧辉煌的石头堆砌的[文]地基上,只有一米多高,但果然是一[章]座小神社,大约十米见方。
建筑本身相当古老,并且在构成区域[来]的广场上生长着一些杂草。
我登上前面的石阶,站在大殿前,却[自]找不到供养箱。
我无奈地将硬币放在门前,拍拍手,[i]转身回家。
前面可以看到一座红色的鸟居。
仔细想想,来到正殿的时候我以为自[a]己没有走到鸟居下面,但是当我仔细[m]观察鸟居的另一边时,我发现了就好[k]像我正要从鸟居门下穿过一样,一棵[.]粗大的树挡住了去路,树根处已分成[c]两半。
注意从缠绕的绳索来看,这很可能是[n]一棵神树。
从森林里有一条小路绕过神树和鸟居[恐],所以我来的时候并没有从鸟居门下[怖]走。
从正殿前的这个位置看去,那个鸟居[鬼]就像是为神树而建的。
环顾四周,没有发现其他鸟居。
这是一座有着神秘结构的神社。
虽然我没有看到任何怪物,但我很高[故]兴能看到这座神社。
一边这么想着,我正准备离开寺院。[事]
突然感觉到一股暖风从鸟居附近的森[文]林里吹来。
当我向那边看去,想知道发生了什么[章]事时,我注意到树林里似乎有什么东[来]西在移动,树林里已经变得很黑了。[自]
我想知道这是不是一群昆虫。
就像滚滚的黑雾。
然而,到目前为止我看到的大多数昆[i]虫群看起来都是白色的。
这是我第一次看到黑色的东西。
而当你继续观察时,黑色逐渐变得更[a]暗。
那团黑色物质最终变成了一个三维影[m]子,并逐渐呈现出类似人的形状。
(也许这就是Tsuntsun大人[k]?)
在广播中,它被介绍为一种黑烟般的[.]怪物,晚上出现在南房总市Masu[c]ma,带着不冷不热的味道。微风。[n]是。
到目前为止是不是很完美?我没有遗[恐]漏任何东西。
不过广播里并没有提到村村大人为何[怖]出现,是否对人类有害,以及遇到他[鬼]该怎么办。
在常见的都市传说中,有一两个咒语[故]或单词会告诉你如何逃脱。
正当我这么想着的时候,我面前的黑[事]影明显变成了人形。
从轮廓来看,似乎是一名女性。
而在黄昏的暮色中,黑影渐渐呈现出[文]色彩。
“哦,妈妈?”
我上小学时,我的母亲因癌症去世了[章]。
如果他还活着,他已经五十多岁了,[来]但站在我面前……她看起来和我记忆[自]中的年轻母亲一模一样。
那是我还很健康、患癌症之前的时候[i]。
你恶作剧的时候有没有被骂很多次?[a]
(拓也……加油。)
母亲怀念的声音在呼唤着我的名字,[m]在向我招手。
“妈妈……”
我的胸口有什么东西涌上来,我的眼[k]睛开始发烫。
我朝它迈出了一步。
那一刻...
我被脚边的人行道绊倒,差点摔倒。[.]
“哎呀……”
当我直起身子抬头一看,妈妈还在微[c]笑着向我招手。
不过,这是一件幸事。
他被一块石头绊倒,恢复了平静。
我的母亲很久以前就去世了。不可能[n]现在就在我面前。
“尊尊先生”
我不知道是不是这样,但肯定是某种[恐]怪物。
“哇!”
我对母亲的怀念瞬间消失,我跑出了[怖]辖区。
我想知道刚才是什么。
我想我母亲的鬼魂永远不会出现在这[鬼]种与我没有任何联系或联系的地方。[故]
走到寺院前的路上,我回头一看,没[事]有人跟踪我。
稍稍松了口气,我快步朝车走去,时[文]不时回头看看,突然一个穿着工作服[章]的老人出现在我面前。
天色黑了,我愣了一下,老人却指着[来]我身后叫我。
“你是把车停在那里的吗?你不应该[自]停在那里。就在道祖金前面。”
“嗯?哦,对不起,这是一个有点像[i]神社。我要去神社。”
“神社?这个时候?”
“是的,发生了一些奇怪的事情。”[a]
我想当地的老人可能知道一些事情,[m]所以我尝试说一下之前发生的事情。[k]
“那大概就是在这儿待了很长时间的[.]村长大人吧。”看似黑烟,却展现了[c]观者内心深处那个重要的人。,把我[n]拖进另一个世界。”
刚才向我招手的母亲。脑海中浮现出[恐]这个画面。
“另一个世界?”
“嗯,没有人被拖进去并返回,所以[怖]没有人知道。”
如果他听从了母亲的召唤,走到了她[鬼]的身边?
“可是你没跟好,估计尊尊大人会很[故]失望的,哇哈哈哈哈哈……”
老者捂着肚子笑了出来声音很大,但[事]这真的那么好笑吗?
老人继续大笑。
“哇哈哈哈哈哈哈……”
老爷子笑得好厉害,让人怀疑他是不[文]是疯了。
我有点害怕,向后退了一步,惊讶地[章]看着。
然后……
老者的身影在黑暗中模糊,化为黑烟[来]。
哈哈哈哈……
虽然看不到老者,但只能听到他的笑[自]声。
“哇!”
我疯狂地跑向车子。
就在那时,我回到车里,疯狂地在口[i]袋里摸索着找钥匙。
我注意到车左侧有东西。
那是一块小石头道祖神。
当汽车尽可能靠近路边停放,以免妨[a]碍过往车辆时,保险杠可能会撞到汽[m]车。
我根本没注意到。
也许那个“津津大人”就是这个道祖[k]神?
如果是这样的话,请不要就这么放着[.]不管。
我赶紧钻进车里,倒了一点,下了车[c],把道祖神放回原来的位置。
然后,他从白天买的纪念品中拿出一[n]颗糖果,蹲在道祖金面前,递给他,[恐]然后双手合十。
-对不起。
我的恐惧帮助了我,我在心里拼命地[怖]道歉。
(不知道现在他们会原谅我吗?)
想到这里,我站起来,转身上车,就[鬼]像我处于同样的位置一样。它冻结了[故]。
我妈妈站在我面前。
我全身起了鸡皮疙瘩。
然后,妈妈又转向我了。当我向他招[事]手时,他笑了。
我从来没有在妈妈脸上看到过如此狰[文]狞的笑容。
“哇!”
当我从妈妈身边溜过去,跳进车里,[章]启动引擎时,我又叫了一声。
母亲的身影在车头灯的照耀下清晰可[来]见。
让我说清楚。
我从妈妈身上碾过去了。
当然,她是在确信那不是她亲生母亲[自]之后才这么做的。
即便如此,我的脸色也一定相当僵硬[i],咬着牙踩下了油门。
果然,眼前的母亲化作一团黑雾,击[a]中了引擎盖和挡风玻璃,就消散了。[m]
然后我就没有停车就离开了这个地方[k]。
…
不过,我还是开着我的车开走了“村[.]村大人”,安全回到了东京。
我想知道。
…
从现在起,我可能再也不能怀着痛苦[c]的怀念心情看妈妈的照片了。
…
◇◇◇◇ FIN
作者:天虚空蔵
原文:ツンツン様
暑かった夏も朝晩の涼しい風により、ようやく終わる気配が感じられるようになってきた。
先日来、土日を含めて仕事に追われ[n]ていた俺は、仕事がひと段落したこ[恐]ともあって会社から半強制的に代休[怖]を取らされることになった。
しかし独身で彼女もいない俺は、平[鬼]日にいきなり休みを貰ってもあまり[故]嬉しくない。
とは言え、折角の平日休みなので房[事]総半島へドライブに行くことにした[文]。
朝の渋滞が終わる頃を見計らって家[章]を出ると、首都高からアクアライン[来]を通って千葉県に入り、そのまま房[自]総半島を横切って外房へと向かう。[i]
天気は快晴で、久しぶりの潮風に当[a]たりながら海を眺め、海鮮丼に舌鼓[m]を打ち、そして行ってみたかった千[k]葉大学付属の小さな水族館をのんび[.]り見学すると、特にすることもなく[c]なった。
さてどうしようかと考えたが陽も傾[n]いてきており、まだ少し早いかとも[恐]思ったが帰宅ラッシュを避けようと[怖]帰路につくことにした。
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普段から車を運転している間はFM[鬼]ラジオを聞いていることが多い。
お気に入りの楽曲などもナビに落と[故]してあるのだが、新鮮な話題や楽曲[事]を提供してくれるので、特に理由が[文]ない限りFMラジオを聞いているの[章]だ。
すると地元のFM局だろうか、千葉[来]県にまつわる妖怪の話をしていた。[自]
基本的にこのような物の怪話は嫌い[i]ではない。
『手賀沼小僧』、『黒入道』、『樹[a]怪』など様々な妖怪が楽し気に紹介[m]されている。
へえ、こんな妖怪がいるんだ、
ふーん、これも千葉だったのか、
などと思いながら聞いていると、そ[k]んな中で『ツンツン様』という妖怪[.]が紹介された。
夕方になると現れる、黒い煙のよう[c]な妖怪だというだけで、詳しいこと[n]はよく解らないらしい。
南房総市の増間という場所に現れる[恐]そうなのだが、ナビで見てみるとこ[怖]こからそれほど離れていない。
せっかくだから試しにどんなところ[鬼]か見てみるかと、ナビの行先にその[故]増間という場所を追加した。
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車がすれ違うのがやっとという狭い[事]道の先に増間ダムがあり、その湖畔[文]に車を停めた。
ダムの水は思ったより濁っており、[章]美しい水辺の風景とは言えないもの[来]の、のどかな風景であり、妖怪が出[自]そうな雰囲気はない。
周辺に何かあるかとスマホでマップ[i]を見たが、ダムの下に浄水場がある[a]くらいで特に何もなさそうだ。
画面を操作して、地図をさらに拡大[m]してみた。
「ふーん、こんなところに神社があ[k]るんだ。」
地図には浄水場の近くの山の中に日[.]枝神社がある。
おそらく地元の氏神様であり、それ[c]ほど立派な神社とは思えないが、折[n]角ここまで来たのだからちょっと挨[恐]拶して帰るかと、車の向きを変えて[怖]ダムの下へと坂を下った。
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一般的な日没時間までまだ少し時間[鬼]があるはずなのだが、谷間になるこ[故]の場所は既に薄暗くなってきている[事]。
ガードレールなどない狭い田舎道を[文]進み、神社の近くと思われる場所ま[章]でくると、路肩に車が停められそう[来]なスペースを見つけて駐車し、車を[自]降りた。
「えっと、こっちだったよな。」
車を離れ、軽い上りになっている林[i]の間を歩いて行くと、脇にかなり古[a]い石の祠が建っていた。
高さ一メートルほどの小さな祠だが[m]、それなりに時代を経て来ているこ[k]とが伺える。
昔は安房の国と呼ばれていたこの辺[.]りは驚くほど古い歴史を持っており[c]、このような山中にも昔から様々な[n]人々が生活していたのだろう。
もしかすると先程の増間ダムの底に[恐]も集落のひとつくらいは沈んでいる[怖]のかもしれない。
そしてその祠から先へ進むとすぐに[鬼]本堂が見えてきた。
石を積み上げた高さ一メートルちょ[故]っとの立派な土台の上に立っている[事]が、案の定、十メートル四方程の小[文]さな神社だ。
建物自体も相当古く、境内となる広[章]場にはうっすらと雑草が生えている[来]。
正面の石段を上り、本堂の前に立つ[自]が賽銭箱が見当たらない。
仕方なく扉の前に小銭を置いて柏手[i]を打ち、さて帰ろうかと後ろを振り[a]返った。
正面には赤い鳥居が見えている。
そう言えば本堂へ来る時には鳥居を[m]潜らなかったなと思ったのだが、そ[k]の鳥居の向こう側をよく見てみると[.]、鳥居を潜る道にまるで通せんぼう[c]をしているように、根元から二股に[n]分かれた太い大きな木が立ち塞がっ[恐]ていた。
注連縄が巻かれているところを見る[怖]と御神木なのだろう。
その御神木と鳥居を迂回するように[鬼]林からの小道があったため、来る時[故]は鳥居を潜らなかったのだ。
本堂の前のこの位置からみると、あ[事]の鳥居はまるで御神木のために建て[文]てあるように見える。
周りを見回しても、他に鳥居は見当[章]たらない。
不思議な造りをした神社だ。
妖怪には出会えなかったが、この神[来]社を見られただけでも良しとしよう[自]。
そう思いながら、境内を出ようとし[i]た時だった。
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鳥居近くの林の中からいきなり生暖[a]かい風が吹いてくるのを感じた。
何だろうと思いそちらに目をやると[m]、かなり薄暗くなってきた林の間に[k]何かが動いているように見える。
羽虫の群れなのだろうか。
それはうねうねと動く黒い靄のよう[.]だ。
しかし、これまで見たことがある羽[c]虫の群れは大体白っぽく見えていた[n]。
黒く見えるのは初めてだ。
そして、そのまま見ているとみるみ[恐]るその黒さが濃くなってゆく。
その黒い塊はやがて立体的な影のよ[怖]うになり、徐々に人のような形に変[鬼]わってゆくではないか。
(ひょっとして、これが”ツンツン[故]様”か?)
ラジオでは、南房総市増間で夕方、[事]生暖かい風と共に現れる黒い煙のよ[文]うな妖怪と紹介していた。
ここまではピッタリじゃないか。何[章]ひとつ外していない。
しかし、”ツンツン様”は何のため[来]に現れるのか、人間に害をなす存在[自]なのか、出会ったらどうすればいい[i]のか、などについては、ラジオで一[a]切触れていなかった。
よくある都市伝説では、逃げるため[m]にはこうすればいいというおまじな[k]いや言葉がひとつやふたつ用意され[.]ているものなのだが。
そんなことを考えているうちに、目[c]の前の黒い影ははっきりと人の形に[n]なっていた。
そのシルエットからすると、どうや[恐]ら女性のようだ。
そして夕暮れの薄明りの中、その黒[怖]い影に徐々に色がついてくるではな[鬼]いか。
「お、お母さん?」
俺は小学生の頃に母親を癌で亡くし[故]ていた。
生きていれば、もう五十歳をとっく[事]に超えているはずだが、目の前に立[文]っている姿は俺の記憶そのままの若[章]い母親の姿だ。
それも、まだ癌を発症する前の元気[来]な頃の。
悪戯してはよく怒られたっけ。
(卓也・・・おいで。)
懐かしい母親の声が俺の名を呼び、[自]俺に向かって手招きをしている。
「母さん・・・」
胸中に何かがこみ上げ、目頭が熱く[i]なってくる。
そしてそちらに一歩踏み出した。
その時・・・
ちょうど足元にあった敷石に躓いて[a]転びそうになったのだ。
「おっと・・・」
体勢を立て直して顔を上げると、母[m]親はまだニコニコしながら手招きを[k]している。
しかしこれが幸いだった。
石に躓いたことで、冷静さを取り戻[.]したのだ。
母親はとっくの昔に死んでいる。今[c]、目の前にいる訳がない。
“ツンツン様”
そうなのかはわからないが、物の怪[n]の類には違いない。
「うわ~っ!」
目の前に姿を現した母親に対する郷[恐]愁の思いは一瞬にして消し飛び、俺[怖]は境内の外へと駆け出した。
今のは何だったのだろう。
こんな縁も所縁もない土地で母親の[鬼]幽霊が現れることはないと思う。
境内の前の道に出たところで振り返[故]ったが、特に追ってくる様子はない[事]。
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少しほっとし、時折後ろを振り返り[文]ながら車へと早足で向かっていると[章]、突然正面に作業服姿の老人が現れ[来]た。
薄暗い中だったため一瞬ビクッとし[自]たが、老人は背後を指差して声を掛[i]けてきた。
「あそこに車を停めてるのはアンタ[a]か?あそこに停めちゃなんねえぞ。[m]道祖神様の真ん前だ。」
「え?ああ、すみません。ちょっと[k]神社に行っていたんです。」
「神社?こんな時間にか。」
「ええ、それでちょっと不思議な事[.]があったんです。」
地元の老人だと何か知っているかと[c]思い、先ほどの出来事を掻い摘んで[n]話してみた。
「それはな、おそらくここら辺に昔[恐]からいらっしゃる”ツンツン様”だ[怖]な。黒い煙のような姿なんだが、見[鬼]る人の心の奥底にいる大事な人の姿[故]を見せて、どこか別の世界へ引き摺[事]り込むだ。」
さっき手招きしていた母親の姿が脳[文]裏に蘇る。
「別の世界って?」
「さあな。引き摺り込まれて帰って[章]きた者はいねえから、誰も知らねえ[来]。」
もし母親の手招きに応じて彼女の傍[自]に行っていたらどうなっていたのか[i]。
「しかしアンタ、よくついて行かな[a]かったな。”ツンツン様”もさぞか[m]し悔しがっちょるだろうに。わっは[k]っはっは・・・」
老人は腹を抱え大きな声で笑ったが[.]、そんなに面白い事なのだろうか。[c]
老人は大きな声で笑い続けている。[n]
「 わっはっはっは・・・」
気が触れてしまったのではないかと[恐]思わせるほど笑い続ける老人。
少し怖くなり一歩後ずさりして、あ[怖]っけに取られて見ていた。
すると・・・
老人の姿が薄闇にぼやけ、黒い煙と[鬼]化したのだ。
わっはっはっは・・・
老人の姿は見えないのに、笑い声だ[故]けが響いている。
「うわ~っ!」
俺は無我夢中で車へと駆け出した。[事]
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車へと戻り、キーを取り出そうと必[文]死でポケットをまさぐっていた時だ[章]った。
自分の車のすぐ左前に何かが転がっ[来]ているのに気がついた。
それは小さな石の道祖神だった。
脇を通る車の邪魔にならないようギ[自]リギリまで路肩に寄せて停めた時に[i]バンパーが当たってしまったのだろ[a]う。
まったく気がつかなかった。
ひょっとすると、あの”ツンツン様[m]”はこの道祖神様だったのか?
そうだとすると、このままにしては[k]いけない。
俺は急いで車に乗り込み、少しだけ[.]車をバックさせると、車から降りて[c]道祖神を元の位置に直した。
そして昼間買ったお土産の中から菓[n]子をひとつ取り出し、道祖神の前に[恐]しゃがんでそれを供えて手を合わせ[怖]る。
ーごめんなさいー。
恐怖感も手伝い、必死に心の中で謝[鬼]った。
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(これで許してもらえるかな)
そう思って立ち上がり、車に乗ろう[故]と後ろを振り返った途端、そのまま[事]の姿勢で固まった。
目の前に母親が立っている。
全身に鳥肌が立った。
すると母親は、再び俺に向かってゆ[文]っくり手招きするとにやっと笑った[章]のだ。
母親のこんな醜怪な笑い顔を見たこ[来]となどない。
「うわ~っ!」
俺はまた大声をあげて母親の脇をす[自]り抜けると車へと飛び込み、そのま[i]まエンジンを掛けた。
ヘッドライトの光の中に母親の姿が[a]くっきりと浮かび上がる。
はっきり言おう。
俺は母親を轢いた。
もちろんそれが本物の母親でないこ[m]とを確信した上での行動だ。
それでも歯を食いしばりアクセルを[k]踏む俺の顔は相当に強張っていただ[.]ろう。
案の定、目の前に迫った母親は、ボ[c]ンネット、そしてフロントガラスに[n]衝突したと思った瞬間、黒い霧とな[恐]って文字通り霧散したのだった。
そして俺はそのまま車を停めること[怖]なく、この地を離れた。
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…
しかし”ツンツン様”を車で蹴散ら[鬼]した俺は、
東京まで無事に帰れるのだろうか。[故]
…
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そして、もう今後は、切なく懐かし[事]い気持ちで母親の写真を見ることが[文]出来ないかもしれない。
…
◇◇◇◇ FIN
声明
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