【江户切子的通灵图】直到你变成石头(二)

iamk 日本恐怖故事 2024-01-12 06:00:02 352 0

江户切子……年轻漂亮的女医生。他通常是一个不起眼的小镇医生,但他熟悉不属于这个世界的事件,并且有一个隐藏的一面可以消除障碍。拥有“江户切子”的隐名。

目崎千里:桐子的助手。大学生。

Mariko Higurashi...一位美丽的客户。某件事,让她指尖石化。

日暮仁五郎:真理子的父亲。一些著名的艺术家。他心脏病发作,昏迷不醒,住进了医院。

宇野圭佑……静五郎的弟子。消失在一个风雨交加的夜晚。

佐野实:静五郎的弟子。在暴风雨的夜晚自杀。

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麻理子的家― ― Jingoro Higurashi 的工作室和住所坐落在老城区的一个[文]安静的地方,远离交通。

和周围的房子比起来,简直就是巨大。

从正面看,它是一座石造的西洋式建筑,但据真理子说,它与一栋日式房屋相连,后面有一个带池塘的花园。

是一座日西合璧的建筑吗?

她介绍自己的父亲是一些圈子里的知[章]名艺人,但这么看,他身边的名气还[来]是挺高的,是个有钱人.似乎是

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我是在圆子的带领下进去的。

在路上,我为她动不了指尖的她开了门。

室内充满了石砌空间特有的凉爽空气。

感觉就像是桐子的诊所。

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从入口空间延伸出来的走廊尽头有一扇门,打开门,绘画和雕塑散落一地。那是一个宽阔空旷的大厅。

有各种各样的东西,从看起来像成品的那些到明显正在建设中的那些。

“这里是工作室。

这里是大家平时工作的地方,也是我父亲去世的地方。”

它也是充实结束自己生命的地方。

万物之中,出现了一片诡异的空地,[自]让人难以找到踏足之地。

也许这就是他的结局。

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我转身的时候,麻理子看向别处,肩[i]膀微微颤抖着。

非常感谢。

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离开工作室,爬上楼梯,就到了真理[a]子的房间。

房间很大,窗边有一架钢琴。

窗外矗立着一棵枝叶茂盛的老樱花树[m]

当我在沙发上坐下时,麻理子递给我[k]一些东西,这是我的指示。

这是一张专辑。

“嗯...给你看这个真的会导致这[.]件事的解决吗?”

“-看

我没有回答她的问题,低头看着相册。

我也不知道。他只是在按照桐子的吩咐去做。

大约有五张专辑。

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真五郎、真理子、实的照片确实很多[c]

还有一张圭佑的照片。 Minoru 是摄影师吗?

包括模型完成的记录,还有很多不经意的日常生活场景。

其实,圭介虽然是弟子,但住在师傅家里,乞求师傅的教诲,肯定受到了家人般的待遇。

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除了三位成年男子,照片中麻理子的成长也很引人注目。

一个十八岁少女成长为成年女性的记录。

据说她本来就很漂亮,五官端正,但随着时间的推移,这种美丽会变得更加精致。这是一个印象。

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家人温暖的目光围绕着它。

摄影师通过取景器的视线。

所有人都看着麻理子。

麻理子受到大家的喜爱。

请看过大部分照片后再提问。

“你有十几年前的照片吗?”

所以有很多近10年的照片圭介和实[n]来到了这所房子。

我父亲总是拍很多照片,我没有拍—[恐]—没错。

“是吗?”p>

麻理子低着头这么说道。

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―你明白了吗』

『这是——?

在我面前,我看到一张老者的脸正凝[怖]视着我的脸。

这是我最早的回忆。

准确的说,是从出生开始就失去所有[鬼]记忆后的第一段记忆。

是这样吗? “没有什么人生是从十七岁开始的。”

我在床上醒来,父亲看着我。

天还没亮。

房间里很黑,看不清父亲的脸,但给我留下了深刻的印象。

整个过程感觉既感动又害怕,就像一只初见世界的幼鸟。

在这一切之中,我面前的这个人——我父亲一个人——就是我的父母,我自然而然地明白,是他对我倾注了无条件的爱。

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有人告诉我,我因病昏迷,醒来时失[故]去了记忆。

难道说我的灵魂在黎明前的暮色中飘荡,幸运地回到了这个身体里?

父亲对我的觉醒特别高兴。

这一刻,我正在从头开始重建自己。[事]

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我的世界和这座安静的大石头大厦的内部一样大。

厚厚的石墙吸收了外界所有的热气和声音,府邸始终安静凉爽。

温度和寂静刚好适合我的身体,也习惯了。

后来,第一次走出大宅,外面世界的炎热和嘈杂让我头晕目眩。

我父亲是我唯一的直系亲属。

我的父亲在某些圈子里是一位知名的艺术家。

豪宅里摆着许多作品。

是绘画、陶器、雕塑和书法。

父亲表达了它,不受形式的束缚,因为情感引导了他。

他曾一度被认为是异端,但很多人都被他父亲的作品所感动。

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我父亲告诉我,后来圭介先生和实先生,还有我母亲,都会来这家当学徒。

母亲 - Marina Higurashi。我的娘家姓 Marina Manaka 也是对我父亲的作品着迷的人之一。

我的母亲是一位音乐家。

我房间里的钢琴原来是妈妈弹的。

我的母亲是一位钢琴演奏家。

这是我父亲告诉我的。

爸爸妈妈上的是同一所高中。

从那时起,被认为是怪人的父亲就被关在艺术社的房间里。

有一天,我在生产中卡住了,傍晚时[文]分,我在教学楼里闲逛,听到音乐室[章]里传来美妙的钢琴声。

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当父亲像受邀一样打开音乐室的门时,映入眼帘的是他年轻的母亲。

落日余晖染红的音乐室。

父亲被女孩继续玩耍的情景感动了,完全不知道父亲已经开门了。

同时,他觉得自己的创作动力如泉涌[来]一般涌了上来。

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对于父亲来说,17岁的母亲的景象已经烙印在他的视网膜上,成为无法磨灭的景象。

我爸对我妈一往情深,我妈也被我爸的艺术打动了,我们就开始交往了。

从艺术和音乐学院毕业后,两人在被周围人认可的情况下结婚了。

……父亲如此详细地告诉我这个他的[自]女儿,他的父母是如何认识的,这可[i]能是我父亲奇怪的一面。

即便如此,父亲还是深爱着母亲。

我对我妈妈没有记忆。

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当我刚醒来时,父亲对我说:“你就像我小时候的玛丽娜一样”,并抚摸着我的头。

黑暗中,父亲看到的是我吗?或者 - 。

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圆子说是完成了说。

这是真理子的父亲日暮仁五郎的病房。

静五郎仍处于昏迷状态,心电图和呼吸音有规律地回荡。

闭着眼睛满脸无畏的老人,让我想起[a]了她至今的故事。看一会儿

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真理子一脸凄凉地看着父亲。

确实如此。

佐野实自杀,浦圭介失踪。

现在父亲走了,就剩下她一个人了。[m]

然而,我去了麻理子家,查了相册,[k]听了她的故事,一路去了真五郎的病[.]房。

不知她是否得到了她想要的所有信息。

Kiriko 没有告诉我任何具体目标。

我的角色永远仅限于不带偏见地“看[c]”。而不是无家可归的桐子。

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离开前,桐子对我说,

『是将物体的身体变成石头之类的高等且难度极高的法术。

当然不能用,而且是不能被诅咒的东西。

Minoru Sano 的故事是 Keisuke Ura 做的,但是仅仅一个艺术家学徒有可能做这样的事情吗?

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首先,她的身体散发着魔法的气息,[n]但却虚弱得可怕。与现在的情况相反[恐]

这到底是怎么回事?

――千里君,要不要去看看?

如你所见,我很忙。'

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鸟子转向画布刷了刷。

那里画的图有点宗教色彩。

西式街角。像那个广场那样的地方放[怖]着一个台座,一个少女摊开双手站着[鬼]

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在她的脚下,三个男人紧贴着她的脚[故]。像是在祈求什么

她是领导吗?

还是像女神?

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屏幕普遍昏暗。

因为人头上的天空是阴天。

然而,在阴云密布的天空下,却漂浮[事]着两只巨大的手掌。

一根细细的、发光的线从它的指尖垂[文]向地面。

这是一个难道是救世之线被拉下了?[章]

丝线在风中飞舞。

台座上的少女睁大了眼睛,仿佛刚刚醒来。

神级人物。

这是桐子在梦中看到的画面。

她画的。

桐子的梦想总是在某个地方相连。

为了这个世界的一些真相。

那画中少女的脸呢?

“哦——”我看着床边,小声的叫了[来]一声。

“怎么了?”

我问。

“不,花……”

看着静五郎的床头柜,花瓶里插着一朵白色的小花。

除了他的女儿真理子,现在应该没有人去过他的病房了。

“这是——”

从我嘴里冒出来的问题还没形成就停[自]了下来。

是因为麻理子突然膝盖骨折,倒在了[i]病房的地板上。

“你没事吧?”

我赶紧把她抱起来。他似乎没有撞到[a]他的头。

可是——。

“哦,这是——”

在我的视线之外。

麻理子纤细柔韧的胳膊和腿在中途变成了坚硬冰冷的石头。

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【江户切子的通灵图】直到你变成石头(二)

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true昏暗的病房。

只有心电图和呼吸音有规律地重复。[m]

刚过午夜。

除了护士查房,其他人都睡着了。

当然没有来客这回事。

此时,病房的门把手正在悄悄转动,[k]一个不太可能的访客身影走了进来。[.]

关上身后的门,同时注意周围的环境[c]

一合上--

摇一摇

Butsu-!

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听起来像是用刀割粗绳。

入侵者听到声音后畏缩。

一道声音从黑暗中传出。

“你终于来了,我等腻了。”

哦,那扇门打不开了。

>

这个房间和外面走廊之间的“联系”已经被切断。

不再有门,只有一堵墙。

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< p>总而言之,这个病房已经变成了和外面不同的空间。

切开是不得已的办法。

p>

但我擅长切——”

床头灯亮起,昏暗地照亮了声音的侧[n]面。

女医生江户切子。

不对,充分发挥超能力的少女现在的名字是江户切子。

她用食肉动物般的眼睛盯着来访者,咧嘴一笑。

我在床头灯的光线照不到的黑暗中观察着情况。

“好吧,别那么僵硬。”

没有我的帮助,你不能离开这个地方。

/p >

请慢慢听我说。”

“浦圭佑——”

紧张地站在那里的人是浦圭佑,我在[恐]相册里见过的人。

(续)


作者:綿貫一
原文:【穢土切子の心霊カルテ】貴女が石になるまで(2)

江戸桐子(えどきりこ)……若く美[怖]しい女医。普段はしがない町医者だ[鬼]が、この世ならぬ出来事に通じ、障[故]りを祓う裏の顔を持つ。「穢土切子[事]」の隠し名を持つ。

目崎千里(めざきせんり)……桐子[文]の助手。大学生。

日暮真理子(ひぐらしまりこ)……[章]美しい依頼人。ある出来事がきっか[来]けで、指先が石化している。

日暮甚五郎(ひぐらしじんごろう)[自]……麻里子の父。一部で著名な芸術[i]家。心臓発作で倒れ、意識不明にな[a]り入院している。

右野圭介(うのけいすけ)……甚五[m]郎の弟子。嵐の夜に失踪する。

左野実(さのみのる)……甚五郎の弟子。嵐の夜に自殺する。

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麻里子の家――日暮甚五郎氏のアト[k]リエ兼住居は、古い下町の、往来か[.]ら奥まった閑静な場所に立っていた[c]

周囲の住居に比べ、とにかくでかい[n]

正面から見ると、石造りの洋館に見[恐]えたが、麻里子の話では、奥は池の[怖]ある庭園を「ロ」の字に囲んだ、日[鬼]本家屋に繋がっているとのことだっ[故]た。

和洋折衷の建物ということか。

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一部では著名な芸術家、と彼女は自身の父親を紹介していたが、こうして見ると、周囲の評価はかなり高く、裕福な人物であるように思える。

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僕は麻里子の案内で中に通された。[事]

途中、指先が動かず難儀している彼[文]女に代わって、ドアの鍵を開けてや[章]った。

屋内は石造りの空間特有の、ひんや[来]りとした空気に満ちていた。

桐子の医院と近い感じがした。

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玄関のスペースから続く廊下の先に[自]ドアがあり、それを開けると絵画や[i]彫刻が雑然と置かれた広いホールで[a]あった。

完成品とおぼしきものから、明らかに制作途中と思われるものまで、様々だ。

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「ここが――アトリエになります。[m]

普段皆が制作に当たっている場所で[k]あり、父が倒れた場所でもあります[.]

そして、左野実が自ら命を絶った場[c]所でもある。

足の踏み場に迷うような物の多さの[n]中で、奇妙に開けたスペースがあっ[恐]た。

恐らくそここそが、彼の最期の場所のはずだ。

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振り返ると、真理子が目を背け、小[怖]さく肩を震わせていた。

「すみません、ありがとうございま[鬼]した。此処はもうけっこうです」

礼を云って真理子を促す。

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アトリエを抜け、階段を昇り真理子[故]の自室に至る。

窓際にピアノの置かれた、広い部屋[事]だった。

窓の外には青々とした葉を繁らす、[文]桜の古木が立っている。

ソファに腰を下ろすと、真理子が僕[章]の指示であるものを持ってくる。

アルバムだった。

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「あの……これをお見せすることが[来]、本当に今回の件の解決に繋がるの[自]でしょうか」

「――拝見します」

僕は彼女の質問には答えず、アルバ[i]ムに視線を落とす。

僕だって実のところわからないのだ[a]。桐子に云われた通りに行動してい[m]るだけなのだから。

アルバムは5冊ほどあった。

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確かに、甚五郎、麻里子、実の映る[k]写真が多い。

圭介が映っている写真もある。実が[.]代わりに撮影者になっているのか。[c]

造形物の完成記録をはじめ、何気な[n]い日常の一コマも多く収められてい[恐]る。

実、圭介は弟子の身でありながら、住み込みで師に仕え、教えを乞うており、まさに家族という扱いだったのだろう。

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成人男性である三人はともかく、や[怖]はり麻里子の成長が写真の中で目覚[鬼]ましい。

十八歳の少女が、大人の女性に成長[故]していくまでの記録。

もとから整った美しい顔立ちをしているが、時とともにその美が洗練されていく、という印象だった。

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それを囲む、家族たちの温かな視線[事]

ファインダー越しの撮影者の視線。[文]

皆が麻里子を見ていた。

麻里子は皆に愛されていた。

あらかた写真を見てから尋ねる。

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「十年以上前の写真は――ないので[章]すか?」

「写真をよく撮ってくれていたのは[来]圭介さんでした。

ですから、圭介さんと実さんがこの[自]家にやってきた、ここ十年の写真が[i]多いのです。

父は、昔から写真をあまり撮らなか[a]った――そうですから」

その云い方に引っ掛かりを覚える。

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「そうです、とは?」

「私には十七歳より前の記憶が――[m]ないのです」

麻里子はうつむいてそう云った。

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『気が――付いたか』

『ここは――?』

目の前に、私の顔を覗きこむ初老の[k]男性の顔が見えました。

それが私の最初の記憶です。

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正確には、生まれてからそれまでの[.]記憶をすっぽりと失くしたうえでの[c]、最初の記憶という意味です。

だってそうでしょう? 十七歳から始まる人生など、ありは[n]しないのですから。

私は、自室のベッドの上で、父に見守られながら目を覚ましました。

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夜明け前でした。

部屋の中は薄暗く、父の顔もはっき[恐]りとは見えませんでしたが、私の目[怖]にはとても印象的に映りました。

まるで初めて世界を見た雛鳥のよう[鬼]に、全ては感動的で、怖ろし気なも[故]のに感じられました。

その中で、目の前の男性――父だけは、私の親であること、無償の愛を私に注いでくれるものと、自然と理解できたのです。

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聞けば、私は病によって昏睡状態に[事]あり、目覚めたときには記憶を失く[文]していたそうです。

そうしてみると、私の魂は夜明け前[章]の薄明の中を漂い、運よくこの身体[来]に戻ってきたということになりまし[自]ょうか。

父は、私の目覚めをことさら喜んで[i]くれました。

私はこの瞬間、私という存在を一から再構築していったのです。

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私の世界は、この広い、静謐な石造[a]りの屋敷の内側と同じ大きさでした[m]

厚い石の壁は、外界の熱と音をすべ[k]て吸い取って、屋敷の中はいつも静[.]かで、ひんやりとしていました。

その温度と静寂は、そのまま私の身[c]体に同調し、馴染みました。

後日、はじめて屋敷の外に出たときなど、外界の熱と騒音に、眩暈がしたほどです。

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私の肉親は父だけでした。

父は一部では名の知れた芸術家であ[n]りました。

屋敷の中には数々の作品が並んでい[恐]ました。

それは、絵画であり、陶芸であり、[怖]彫刻であり、書でありました。

父は、その情動が赴くままに、形に[鬼]とらわれずそれを表現しました。

それゆえ異端とされることもありましたが、父の生み出す作品に、胸打たれる人々も多くおられました。

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それは後に弟子としてこの家へやっ[故]てくる、圭介さんと実さんもそうで[事]したし、私の母もそうだったと父か[文]ら聞かされました。

母――日暮麻里奈。旧姓、真中麻里奈(まなかまりな)も父の作品に魅了された人間のひとりでした。

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母は音楽家だったそうです。

私の部屋にあるピアノは、もともと[章]母が弾いていたものです。

母はピアノ奏者でした。

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これは父から聞かされた話です。

父と母は同じ高校の出身でした。

その頃から変わり者とされていた父[来]は、美術部の部室に籠っていました[自]

ある時、制作に行き詰まり、夕暮れの校舎内をぶらぶらとうろついているときに、音楽室から美しいピアノの演奏が聞こえてきました。

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誘われるように音楽室の扉を開けた[i]父の目に飛び込んできたもの、それ[a]が若かりし日の母の姿でした。

夕日の朱に満たされた音楽室。

一心不乱に――父が扉を開けたこと[m]にすら気づかず――演奏を続ける少[k]女の姿に、父は胸を打たれました。[.]

そして、同時に創作意欲が泉のように湧いていくのを感じたそうです。

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父にとってその時の、十七歳の母の[c]姿は網膜に焼き付いて消えない光景[n]となりました。

父は熱烈に母に求愛し、母もまた、[恐]父の芸術に心を打たれ、交際をする[怖]ことになりました。

芸大と音大を卒業し、ともに周囲に認められるようになった頃、ふたりは結婚をしました。

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……両親のなれそめを、こうまで詳[鬼]しく娘の私に話して聞かせるという[故]のも、父の変わった一面かもしれま[事]せんね。

それでも、父は母を、深く深く愛し[文]ていたのです。

私に、母の記憶はありませんが。

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父は、目覚めたばかりの私に、「お[章]前は、若い頃の麻里奈そのままだ」[来]と云い、頭を撫でました。

薄闇の中で、父の目に映っていたのは、私の姿だったのでしょうか。それとも――。

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麻里子はそう云って話を終えた。

ここは、麻里子の父、日暮甚五郎の[自]病室である。

甚五郎の昏睡はいまだ続いており、[i]心電図と呼吸器の音が規則的に響い[a]ている。

瞼を閉じた、精悍な顔立ちの老人を、僕はこれまでの彼女の話を思い出しながら眺める。

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麻里子は心細そうな表情で、父を見[m]ている。

それはそうだろう。

左野実が自殺し、右良圭介が失踪し[k]た。

これで父にまでいなくなられたら、彼女は独りになってしまう。

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しかし――桐子の云いつけ通り、麻[.]里子の家へ行ってアルバムを確認し[c]、彼女の話を聞いて、甚五郎の病室[n]までやってきた。

これで、彼女の欲しかった情報はす[恐]べて手に入ったのだろうか。

僕に対して、桐子は具体的な目的を[怖]伝えない。

僕の役目は常に、先入観なく「見てくる」ことに限られる。出不精の桐子の代わりに。

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出発の前に、桐子は僕にこう云った[鬼]

『対照の身体を石に変えるなど、高[故]度にして至難な呪術だ。

当然私には使えないし、呪い返しな[事]どできない部類のものだ。

左野実の話では右良圭介の仕業ということだが、一介の芸術家見習いにこんなことが可能なのだろうか。

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そもそも彼女の身体から呪術の匂い[文]はするのだが、ひどく弱々しい。現[章]在の状況と相反する。

これは一体どういうことだろう。

――千里君、見てきてくれるかい?[来]

私はほら、ご覧のとおり忙しい』

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桐子はキャンバスに向かい、筆を動[自]かしていた。

そこに描かれている絵は、どこか宗[i]教的な匂いのするものだった。

西洋風の街角。その広場のような場所に台座が置かれ、一人の少女が両手を広げ立っている。

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その足元、三人の男が彼女の脚元に[a]すがっている。なにかを求めるかの[m]ように。

彼女は指導者なのか。

それとも女神のような存在なのだろうか。

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画面は全体的に薄暗い。

人々の頭上の空は曇天であるからだ[k]

しかし、その曇天を割って、巨大な[.]ふたつの手のひらが浮いている。

その指先からは細く光る糸が地上に[c]向かって垂らされている。

これは、救いを求めるものに差し伸べられた、救いの糸なのだろうか。

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糸は儚げに風になびいている。

台座の上の少女は、今目覚めたかの[n]ように、薄く目を開けている。

神々しい姿。

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これは桐子が夢に視たイメージだ。[恐]

それを彼女は絵に描く。

桐子の夢は、いつもどこかに繋がっ[怖]ている。

この世界の、なにかの真実に。

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そして、その絵に描かれた少女の顔は――。

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「あら――」

桐子の絵の中の少女と同じ面影を持[鬼]つ女性――麻里子は、彼女の父の病[故]床の枕元を見て、小さく声を上げて[事]いた。

「どうしたんですか?」

僕は尋ねる。

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「いえ、花が――」

見ると、甚五郎氏の枕元の机には、[文]小さな白い花が花瓶に活けられてい[章]た。

彼の病室を訪ねるものなど、今は娘[来]の麻里子以外にはいないはずだった[自]

「これって――」

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僕の口から発せられた問いは、形に[i]なる前に途切れた。

麻里子が不意に膝を折って病室の床に倒れ込んだからだった。

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「大丈夫ですか!」

僕は慌てて彼女の上半身を抱き起す[a]。頭は打っていないようだ。

しかし――。

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「ああ、これは――」

僕の視線の先。

麻里子の細く、しなやかな腕と脚は、その半ばまでが固く冷たい石へと変わっていた。

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真っ暗な病室。

心電図と呼吸器の音だけが規則的に[m]繰り返す。

時刻は深夜二時を回ったところだ。[k]

看護師の見回りのほかは、皆が寝静[.]まった時間。

当然、見舞客などあるわけもない。

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今、静かに病室のドアノブが回り、[c]ありえない訪問客が人影となって侵[n]入してくる。

辺りを警戒しながら、後ろ手にドア[恐]を閉める。

閉まり切ったとたん――

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shake

ブツン――!

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太い縄を刃物で勢いよく切断した時[怖]のような音が響く。

侵入者はその音に身をすくませる。[鬼]

暗闇から声が発せられる。

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「ようやくのお越しですか。待ちく[故]たびれてしまいましたよ。

ああ、もうその扉は開きませんよ。[事]

この病室と外の廊下とは、『繋がり[文]』を切断されてしまいました。

そこにあるのはもはや扉ではありません。ただの壁です。

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簡単に言えば、この病室は、外とは[章]異なる空間になったということです[来]

切った張ったは最後の手段。

ですが私、切るのは得意なんです―[自]―」

ベッドライトが灯され、声の主の横顔がぼんやりと照らし出される。

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女医・江戸桐子。

いや、異能の力を駆使する今の彼女[i]の名は、呪医・穢土切子だ。

彼女は肉食動物のような鋭い眼光で[a]訪問者を射すくめ、にたりと笑う。[m]

僕はベッドライトの灯りの届かない闇の中で、その様子を見ている。

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「まあまあ、そう固くならないでく[k]ださい。

どうせこの場所からは、私の力無し[.]では出られないんですから。

ゆっくり話でも聞いていってください」

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「右良圭介さん――」

緊張した面持ちで立ちすくんでいた[c]のは、アルバムの写真で見た、右良[n]圭介その人だった。

(続く)

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